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コラム
2018年11月22日
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消費増税対策が目白押し
政府は、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げが経済に影響を及ぼさないよう政策を総動員する方針だ。具体的には、従来から決まっていた幼児教育の無償化、軽減税率の導入に加え、キャッシュレス決済時のポイント還元、自動車・住宅購入支援策、プレミアム商品券の発行などが検討されている。
このような対策は、消費税率引き上げに伴う需要の落ち込みを一定程度緩和することが見込まれるが、内容的には問題も多い。たとえば、軽減税率はその対象となるテイクアウトと外食の区別の難しさ、システム改修の遅れ、ポイント還元は対象となる中小企業の線引き、システム対応の問題、プレミアム商品券は費用対効果の低さ、などが指摘されている。
このような対策は、消費税率引き上げに伴う需要の落ち込みを一定程度緩和することが見込まれるが、内容的には問題も多い。たとえば、軽減税率はその対象となるテイクアウトと外食の区別の難しさ、システム改修の遅れ、ポイント還元は対象となる中小企業の線引き、システム対応の問題、プレミアム商品券は費用対効果の低さ、などが指摘されている。
オリンピック前に成長率はピークアウト?
消費増税対策はその中身に加え、期限付きのものが含まれていることも気になるところだ。最近の日本経済は設備投資やインバウンド需要を中心に東京オリンピック関連需要で押し上げられているが、その効果はいずれなくなる。東京オリンピック・パラリンピックは2020年の7月から9月にかけて開催される(オリンピック:7/24~8/9、パラリンピック:8/25~9/6)。
ここで、過去の夏季オリンピック開催国において、開催前後の四半期毎の実質GDP成長率(1964年の東京(日本)から2016年のリオデジャネイロ(ブラジル)までの平均。ただしデータの制約から1980年のモスクワ(ソ連)を除く)をみると、成長率のピークは開催2四半期前で、その後1年間は伸び率が低下していることが確認できる。需要項目別には、総固定資本形成は開催3四半期前がピークで、開催2四半期後まで伸び率が急低下しており、個人消費は開催2四半期前をピークに、開催3四半期後まで伸び率が緩やかに鈍化している。これを機械的に2020年の東京オリンピック・パラリンピックに当てはめると、成長率のピークは2020年1-3月期となる。もちろん、実際の経済はオリンピック以外の要因にも左右されるが、これまで景気を押し上げてきた要因のひとつがなくなることは間違いない。消費増税対策の詳細は年末までにまとめられるが、時限措置の期間が1年となった場合、ちょうどオリンピック開催直後に対策が期限切れを迎えることになってしまう。
過剰な対策は景気の落ち込みを増幅する恐れ
消費増税は家計の負担を増やすことによって政府の収入を増やす政策なので、消費の水準が一定程度落ち込むことは避けられないと割り切ることも必要だ。一時的な需要喚起策は景気の落ち込みを先送りしているにすぎない。
対策の規模を大きくすれば、消費増税後の需要の落ち込みをある程度緩和することはできるかもしれない。しかし、このことがオリンピック終了後の景気の落ち込みを増幅することになっては元も子もないだろう。先の先を見越した経済政策運営が求められる。
対策の規模を大きくすれば、消費増税後の需要の落ち込みをある程度緩和することはできるかもしれない。しかし、このことがオリンピック終了後の景気の落ち込みを増幅することになっては元も子もないだろう。先の先を見越した経済政策運営が求められる。
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(2018年11月22日「研究員の眼」)
03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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