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働く女性の消費志向-独身と妻は「こだわり」、母は「安価重視」「環境安全」と「衝動買い」
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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2 久我尚子「シェアリング志向が強いのは誰?」、ニッセイ基礎研究所、基礎研究レポート(2018/6/25)
一方で、年収とともに経済的余裕が生まれるためか「安価重視志向」は顕著に弱くなる。なお、この点と矛盾するようだが、年収700万円以上の母では「中古・シェア志向」が強い。その理由については、サンプル数が限られるため、データを深堀りすることが難しいが、年収700万円以上の母では決して若い年代が多いわけではない(50歳代が約6割)。可能性として考えられるのは、前述の既出レポート2でも指摘した点だ。男性では、年収300万円付近と年収1千万円付近で「中古・シェア志向」が強いのだが、前者はとにかく安くおさえたいという経済的理由によるものであり、後者はモノによっては(例えば消耗品など)コストパフォーマンスを重視して安くおさえるという合理的判断の上で利用している。コスパ意識に関連の深い「価格が品質に見合っているかどうかをよく検討する方だ」という問いについて、あてはまる割合を見ると、男性では年収とともに選択割合が上昇し、年収1千万円でピークを示す。同様に、働く女性の年収とコスパ意識の関係を見ると、全体でも母でも、年収とともにコスパ意識は高まり、年収700万円以上で最も高くなる(図表9)。
4――おわりに~働く母が増えれば消費市場は活性化する可能性も?時間や労力のコスト低減が鍵
独身や妻で「こだわり志向」が強いのは、子どものいる母と比べて時間のゆとりがあるために、何かを買う時は時間をかけて情報収集をして、自分の好みにこだわって選ぶ時間があるためのようだ。一方、母になると、独身や妻で見られたこだわりは弱まり、家計の節約などを考慮して安くて経済的なものを選んだり、子どもをはじめ家族のために環境や安全に配慮して選んでいる様子がうかがえた。さらに、母で興味深い点は、衝動買い志向が強いことだ。これはいわゆる女性の衝動買いでイメージされるような、モノへの衝動的な欲求やストレス発散ではなく、時間がないために買える時につい買い込んでしまう、ということのようだ。
政策の後押しもあり、今後、特に子育てをしながら働く女性が増えるだろう。子育て期は出費のかさむ時期であり、家計の管理は妻が担う家庭が多いとすれば、働く母は消費者として魅力的だ。働く母は節約意識や環境や安全に配慮する意識が高く、時間がないためにまとめ買いをするという特徴がある。また、高年収の母はシェアリングサービスなどを活用する傾向もある。働く母には、金額面でのコスト低減のほか、買い物にかかる時間の短縮3、あるいは家事・育児の代行4など時間や労力のコストを減らす商品やサービスが響きやすいだろう。働く母は家族のための消費に加えて、自分のための消費にも旺盛であるため5、働く母が増えれば、日本の消費市場の活性化につながる可能性もある。
3 例えば、ネット宅配野菜のオイシックスでは、予め商品がカートに入っており、利用者は不要なものをカーとから削除し、必要なものを追加する仕組みだ。
4 働く母の「中古・シェア志向」の強さと家事や育児のシェアリングサービスの親和性は高い。年収と友に高まる合理的な判断に加えて、スマホワンストップによる利便性の高さも時間のゆとりのない働く母に響きやすいのだろう。
5 久我尚子「働く女性の消費実態 ~独身・妻・母の生活状況や消費志向の違いは?」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2013/5/13)
(2018年11月12日「基礎研レポート」)
03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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