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- 中国経済見通し-18年下期は6.3%前後へ減速、米中貿易戦争が激化すればさらなる下振れも
2018年08月24日
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4.輸出の動向

今後の輸出入動向を考えると、世界経済の持続的拡大や一帯一路沿線地域への影響力拡大を背景に輸出は好調を維持すると見られるものの、中国国内の製造コスト上昇で製造拠点を後発新興国へ移す動きがあるのに加えて、米中貿易摩擦の深刻化がそれを加速させる“トランプシフト”が起きる可能性もあることから、輸出の伸びは小幅に鈍化するだろう。一方、輸入に関しては、習近平国家主席が18年4月の博鰲(ボアオ)アジアフォーラムで「輸入を主体的に拡大」する方針を示し、7月には輸入促進のため関税を引き下げたのに加えて、11月には第1回国際輸入博覧会が上海(青浦区)で開催されて、欧米先進国や一帯一路沿線地域から延べ15万人超のバイヤーが集まる見込みでもあることから、輸入は輸出以上に高い伸びを示すだろう。そして、経済成長率への純輸出のプラス寄与は減少すると見ている(図表-11)。
5.中国経済の見通し

18年の成長率は前年比6.5%増へ、19年は同6.3%増へと減速すると見ている。18年上期の成長率は前年比6.8%増だったので18年下期は同6.3%前後に減速することになる。個人消費は消費者信頼感指数がピークアウトするなど不安材料が浮上してきたものの、中間所得層の増加がサービス消費を拡大し、ネット販売化が新たな消費需要を喚起する流れは続いており、また住宅販売にも底打ちの兆しがでてきたことから、個人消費は底堅い伸びを維持すると見ている。投資は過剰設備・過剰債務の整理が足かせで、金融リスクの確実な防止・解消もマイナス要因となるが、「中国製造2025」や「インターネット+」に関連する領域では積極的な投資が期待できるのに加えて、中国政府がインフラ投資の下支えに動き始めたことから、低位ながらも底堅く推移すると見ている。但し、輸出は世界経済の持続的拡大などを背景に好調を維持するものの、中国政府の輸入拡大方針を背景に輸入はそれ以上に高い伸びを示すことなどから純輸出のプラス寄与は減少すると見ている。なお、18年の消費者物価は前年比1.9%上昇、19年は同2.2%上昇と予想している(図表-12)。
2|落としどころの見えない米中貿易摩擦が最大のリスク要因
中国経済を見通す上では、落としどころの見えない米中貿易摩擦が最大のリスク要因と考えている。米国は引き続き対中制裁関税を発動する見通しである。トランプ米政権の対中制裁関税は4段階構成となっており、7月6日には第1弾を発動し340億米ドル分の輸入品に25%の追加関税を課し、8月23日には第2弾を発動し160億米ドル分の輸入品に25%の追加関税を課した。そして、9月以降には既に品目リストを公表済みの第3弾の輸入品(2000億米ドル分)に対して追加関税を課し、合計すると2500億米ドルに達する見通しだ。そして、トランプ米大統領は対中輸入(約5000億米ドル)の残り(約2500億米ドル)に対しても追加関税を課す可能性を示唆している(第4弾)。第3弾まで合計2500億米ドルの追加関税に関しては、成長率を0.1~0.3%押し下げる程度に留まり、中国経済への影響は小幅に留まるだろう。第3弾(2000億米ドル)の品目リストを見ても、スマホやパソコン、それに多くの衣類など中国経済の「急所」となる品目が外されたからだ。しかし、米国が第4弾の発動に踏み込むと米中経済への影響は格段に大きくなるだろう。中国を製造拠点としてきた米中企業などが、中国以外へ製造拠点を移す「トランプシフト」が起きて、中国では国内投資が失速する恐れがでてくる一方、中国を製造拠点としていた米国企業(スマホやパソコン等)も中国並みの生産効率で製造できる移転先を直ぐには開拓できないだろう。さらに、中国が対抗措置として航空機に対する追加関税や米国製品の不買運動などに踏み込めば、米国経済への打撃は大きくなる。今後しばらくは米中両政府の動きとそれ対処する民間企業の動向に細心の注意が必要だ。
中国経済を見通す上では、落としどころの見えない米中貿易摩擦が最大のリスク要因と考えている。米国は引き続き対中制裁関税を発動する見通しである。トランプ米政権の対中制裁関税は4段階構成となっており、7月6日には第1弾を発動し340億米ドル分の輸入品に25%の追加関税を課し、8月23日には第2弾を発動し160億米ドル分の輸入品に25%の追加関税を課した。そして、9月以降には既に品目リストを公表済みの第3弾の輸入品(2000億米ドル分)に対して追加関税を課し、合計すると2500億米ドルに達する見通しだ。そして、トランプ米大統領は対中輸入(約5000億米ドル)の残り(約2500億米ドル)に対しても追加関税を課す可能性を示唆している(第4弾)。第3弾まで合計2500億米ドルの追加関税に関しては、成長率を0.1~0.3%押し下げる程度に留まり、中国経済への影響は小幅に留まるだろう。第3弾(2000億米ドル)の品目リストを見ても、スマホやパソコン、それに多くの衣類など中国経済の「急所」となる品目が外されたからだ。しかし、米国が第4弾の発動に踏み込むと米中経済への影響は格段に大きくなるだろう。中国を製造拠点としてきた米中企業などが、中国以外へ製造拠点を移す「トランプシフト」が起きて、中国では国内投資が失速する恐れがでてくる一方、中国を製造拠点としていた米国企業(スマホやパソコン等)も中国並みの生産効率で製造できる移転先を直ぐには開拓できないだろう。さらに、中国が対抗措置として航空機に対する追加関税や米国製品の不買運動などに踏み込めば、米国経済への打撃は大きくなる。今後しばらくは米中両政府の動きとそれ対処する民間企業の動向に細心の注意が必要だ。
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(2018年08月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
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