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健康寿命の都道府県格差
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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3――都道府県別の健康寿命の推移
都道府県別の健康寿命の推移については、全体として延伸したうえで、都道府県間のバラつき(標準偏差)が縮小することが望ましい。そこで、2010年、2013年、2016年の健康寿命について、0.5年刻みでの度数分布の推移をみる(図表5)。その結果、度数分布は、男女とも右側へシフトしており、全体として年を追うごとに延伸していることがわかる。都道府県のバラつき(標準偏差)は、男女それぞれ0.68→0.59→0.51、0.77→0.72→0.66と縮小していた。2010年から望ましい方向で健康寿命が延伸してきたと言える。ただし、都道府県別の健康寿命には、サンプル数が少ないこともあり、一定の誤差を含むと考えられている。厚生労働省では、都道府県の格差縮小の評価には、この誤差を補正した標準偏差2を使っている。これによれば、男性の都道府県差は有意に縮小していたが、女性の都道府県差の縮小は有意ではないとのことだ3。
2 厚生労働科学研究「健康寿命及び地域格差の分析と健康増進対策の効果検証に関する研究」による。
3 厚生労働省「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会」(2018年3月9日)より。
4――健康寿命の延伸、および都道府県差縮小に向けて
まず、平均寿命が長い都道府県は、男女とも長い傾向があった。生活習慣や食文化等を含む都道府県固有の要因の影響を受けていると考えられる。一方、健康寿命は平均寿命ほど、男女に共通した都道府県による傾向はみられなかった。
平均寿命と健康寿命の関係、不健康期間と健康寿命の関係をみると、男性はいずれとも相関関係があり、男性の都道府県による差は平均寿命の差と不健康期間の差によるものと考えられる。一方、女性は平均寿命とは相関がなく、不健康期間と強い相関がある。女性の平均寿命の都道府県差は最大で1.74年と小さいのに対し、不健康期間の差は最大3.20年と大きいこともあり、不健康期間の影響が大きいものと考えられる。すなわち、健康寿命は必ずしも平均寿命と連動して延伸しない。したがって、平均寿命、健康寿命それぞれについて、延伸に向けた取組が必要だと考えられる。
時系列でみると、男女とも、健康寿命は全体として年を追うごとに延伸していた。都道府県のバラつき(標準偏差)は、男女とも縮小傾向にあった。しかし、都道府県別に健康寿命の推移をみていくと、すべての都道府県で延伸しているわけではない。上述のとおり、都道府県別の数値には一定の誤差を含む。そのため、ちょっとした値の上下に囚われる必要はないかもしれないが、国全体の延伸傾向や都道府県差縮小傾向とは別に、都道府県別の推移を注視しておく必要があるだろう。
今後、男性の平均寿命の都道府県差も女性と同様に小さくなるとすれば、健康寿命のさらなる延伸、および都道府県差の縮小に向けては、これまで以上に不健康期間の短縮、および都道府県差縮小が引き続き重要となるだろう。
(2018年05月01日「基礎研レター」)
03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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