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治癒率の期間調整-確率の値はどのように調整すべきか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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複数の試験結果を比較する場合などで、これらの確率に対して、期間の調整が必要となる場合がある。そのために、例えば、次のような問題に、回答できるようにしておかなくてはならない。
問題1
ある病院で、1,000人の患者を2年間追跡調査したところ、2年後に400人が治癒しました。治癒しなかった600人は、2年後も治療を続けています。治癒率が期間によらず一定と仮定すると、この1,000人の患者の年間治癒率はいくらでしょうか ?
2年目に治癒した人の数は、1年目には治癒しなかった人の数に、年間治癒率を乗じた人数である。
そこで、1年目に治癒した人(1,000人×年間治癒率)と、2年目に治癒した人(1,000人×(1 - 年間治癒率)×年間治癒率)の合計が、400人という方程式を作る。これは、年間治癒率を変数とした2次方程式となる。そこで、これを解いて年間治癒率は、22.5%となる。20%より、やや大きい結果となる。
それでは、追跡調査の期間が2年よりも長かったらどうなるだろうか。例えば、次のような問題が考えられる。
問題2
ある病院で、1,000人の患者を5年間追跡調査したところ、5年後に500人が治癒しました。治癒しなかった500人は、5年後も治療を続けています。治癒率が期間によらず一定と仮定すると、この1,000人の患者の年間治癒率はいくらでしょうか ?
一般に、上記の2つの問題と同様に、1,000人の患者をn年間追跡調査した結果、n年後の治癒者数がわかった場合、治癒率が期間によらず一定と仮定すると、年間治癒率は次のようになる。
それでは、逆に、年間治癒率がわかっている場合に、ある期間の治癒率を求めるとしたら、どうなるだろうか。つまり、次のような問題が考えられる。
問題3
ある病院で、1,000人の患者を1年間追跡調査したところ、1年後に200人が治癒しました。治癒しなかった800人は、1年後も治療を続けています。治癒率が期間によらず一定と仮定すると、この1,000人の患者のうち、最初の3ヵ月後に、何人が治癒したと考えられますか ?
このように、べき乗の計算が入るものの、比較的に簡素な算式で、治癒率の期間調整を行うことができる。この計算のベースとなっているのは、高校で学ぶ、方程式やべき乗の数学だ。高校での数学の知識が、実務で、このように役に立つことは、なかなか興味深いと思われるが、いかがだろうか。
(*)問題3の計算
3/12年後の治癒者数 = 1,000人 × (1-(1-20%)の(3/12)乗)
= 1,000人 × (1-0.8の(1/4)乗)
= 54人
(2018年02月05日「研究員の眼」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
篠原 拓也のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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