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- 貸出・マネタリー統計(17年8月)~不動産向け融資の減速が鮮明に
2017年09月11日
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1.貸出動向: 都銀の影響で伸び率が縮小
9月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、8月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.25%と前月(同3.42%)から低下した(図表1)。伸び率が低下したのは4ヶ月ぶり。地銀等は前年比3.6%(前月も同様)と横ばいを維持したが、都銀等が前年比2.8%(前月は3.2%)と大きく低下したためだ(図表2)。主にM&A資金の貸出実行タイミングによる振れの模様であり、貸出の増勢が鈍化基調に転じたとはまだ判断できない。
また、8月10日に発表された4-6月期の貸出先貸出金によれば、従来、超低金利や相続税対策、銀行の積極姿勢などから著しく増加していたアパートローンなど個人貸家業向けの新規貸出が前年比14.5%減とマイナス幅を大きく広げた(図表3)。この影響もあり、不動産業向け全体でも前年比7.8%減と1年半ぶりにマイナスへ転じている。背景には当局の監視強化や空室率上昇への警戒感などがあるとみられる。
また、8月10日に発表された4-6月期の貸出先貸出金によれば、従来、超低金利や相続税対策、銀行の積極姿勢などから著しく増加していたアパートローンなど個人貸家業向けの新規貸出が前年比14.5%減とマイナス幅を大きく広げた(図表3)。この影響もあり、不動産業向け全体でも前年比7.8%減と1年半ぶりにマイナスへ転じている。背景には当局の監視強化や空室率上昇への警戒感などがあるとみられる。
不動産向け貸出が鈍化したことも、直近の銀行貸出全体の増勢一服に影響している。
次に、為替変動等の影響を調整した実勢である「特殊要因調整後」の銀行貸出伸び率(図表1)1を見ると、直近判明分である7月の伸び率は前年比3.22%と6月(3.21%)からほぼ横ばいとなった。見た目の銀行貸出の伸び率は6月(3.33%)から6月(3.42%)にかけて上昇しているが、上昇分はほぼ円安効果ということになる。
8月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、ドル円レートの前年比での円安幅が8.5%と7月の8.2%から若干拡大しており(図表4)、見た目の伸びにおける為替によるかさ上げ幅も若干拡大したと考えられる。従って、この影響を考慮した8月の特殊要因調整後の伸び率は、見た目の伸び率の低下幅(0.18%)よりも若干大きめに押し下げられ、前年比3.0%強になったと推測される。
次に、為替変動等の影響を調整した実勢である「特殊要因調整後」の銀行貸出伸び率(図表1)1を見ると、直近判明分である7月の伸び率は前年比3.22%と6月(3.21%)からほぼ横ばいとなった。見た目の銀行貸出の伸び率は6月(3.33%)から6月(3.42%)にかけて上昇しているが、上昇分はほぼ円安効果ということになる。
8月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、ドル円レートの前年比での円安幅が8.5%と7月の8.2%から若干拡大しており(図表4)、見た目の伸びにおける為替によるかさ上げ幅も若干拡大したと考えられる。従って、この影響を考慮した8月の特殊要因調整後の伸び率は、見た目の伸び率の低下幅(0.18%)よりも若干大きめに押し下げられ、前年比3.0%強になったと推測される。
2.マネタリーベース: 増加ペースの鈍化が一服

また、同じく季節性が除外されるマネタリーベース(末残)の前年比増加額を見ても、64.6兆円と昨年前半までの概ね80兆円程度には遠く及ばないものの、下げ止まっている。
ただし、今後については、日銀の大量国債買入れによって市中に残存する国債残高が減少に向かうため、日銀の国債買入れペースは徐々に縮小に向かうとみられ、マネタリーベースの増加ペースも緩やかに鈍化していくと考えられる。
(2017年09月11日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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