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EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(2)-政策オプションの影響評価-
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(1)政策オプション
2つの政策課題を挙げて、それぞれに対して、2つずつのオプションを検討した。
「政策課題1:ルックスルー・アプローチの拡張範囲」については、オプション1.1 (全ての投資関連会社への拡張(より広範な拡張))とオプション1.2 (参加者への拡張(狭い拡張))の2つのオプションを検討した。
「政策課題2:関連する投資ビークルに対する強制的なルックスルー・アプローチ」については、オプション2.1(SCRが高くなる可能性が高い場合は必須)とオプション2.2 (全ての場合に必須)の2つのオプションについて検討した。
9.8.1.政策オプション
675.EIOPAは、ルックスルー・アプローチに関するこの助言の検討中、異なる選択肢が検討され議論される2つの主要な政策課題を特定した。
政策課題1:ルックスルー・アプローチの拡張範囲
政策課題2:関連する投資ビークルに対する強制的なルックスルー・アプローチ
政策課題1 - ルックスルー・アプローチの拡張範囲
676.ルックスルー・アプローチの拡張に関して、以下のオプションが検討された。
オプション1.1 - 全ての投資関連会社への拡張(より広範な拡張):「投資関連会社」は、投資会社/会社が子会社であるか、又は参加が保持されている他の会社であるか、指令83/349 / EEC33の第12条(1)に定められた関係
オプション1.2 - 参加者への拡張(狭い拡張):ルックスルー・アプローチは、「参加」と見なされる投資関連のビークルに適用する必要がある。「参加型での関連投資会社」は、以下の場合に特定される。
a) 保険会社が、直接的又は支配的に、投資企業/ビークルの議決権又は資本の20%以上を所有している。又は
b)保険会社は、投資ビークル/事業体に対して重要な影響を効果的に行使することができる。
政策課題2:関連する投資ビークルに対する強制的なルックスルー・アプローチ
連する投資ビークルのルックスルー・アプローチの強制的な拡張に関しては、以下のオプションが検討された。
オプション2.1 - SCRが高くなる可能性が高い場合は必須:その適用から得られるSCRが対応する株式リスクチャージよりも高くなる(より慎重になる)場合にのみ、ルックスルー・アプローチの適用が必須
オプション2.2 - 全ての場合に必須:ルックスルー・アプローチの適用は、より低いSCRを決定する可能性があるかどうかにかかわらず、全ての場合に必須
分析の結果、以下の通りとしている。
・政策課題1(ルックスルー・アプローチの拡張範囲)に関しては、よりリスクに敏感で、複数のエンティティが「影響力」を組み合わせて実施するケースを適切にカバーすることから、オプション1.1 (全ての投資関連会社への拡張)が好ましい。
・政策課題2(関連する投資ビークルに対する強制的なルックスルー・アプローチ)に関しては、ルックスルーが必要な他のファンドとは異なる方法で投資関連会社を取り扱う特別な理由はないので、オプション2.2(全ての場合に必須)が好ましい。
9.8.3.オプションの比較
685.政策課題1(ルックスルー・アプローチの拡張範囲)に関して、好ましいオプションはオプション1.1 (全ての投資関連会社への拡張)である。このアプローチはよりリスクに敏感であり、複数のエンティティが「影響力」を組み合わせて実施するケースを適切にカバーする。
686.政策課題2(関連する投資ビークルに対する強制的なルックスルー・アプローチ)に関して、好ましい選択肢はオプション2.2(全ての場合に必須)である。代替案は簡素化されているように見えるかもしれないが、ルックスルーが必要な他のファンドとは異なる方法で投資関連会社を取り扱う特別な理由はないので、一般原則を適用する必要がある。ルックスルーの簡素化に関するEIOPAの取り組みの中で、より高いSCRにつながる場合にのみルックスルーを必須とするオプションをさらに調査するかもしれない。
(1)政策オプション
以下の3つの政策課題とそれぞれのオプションが検討された。
「政策課題1:データ基準を変更すべきか。」
「政策課題2:現在のUSPの方法を変更すべきか。」
「政策課題3:非比例再保険のための新しいUSP手法を導入すべきか。」については、オプション3.1(非比例再保険の調整係数に対するUSPの方法の数をストップロス契約に拡張する)とオプション3.2 (非比例再保険の調整係数に対するUSPの方法の数をストップロス契約に拡張しない)の2つのオプションが検討された。
ただし、政策課題1については、承認されたUSPの数を考慮して、この政策オプションをもう検討しないことを決定しており、政策課題2についても詳細な分析は行っていない。
9.9.1.政策オプション
687.EIOPAは、USPに関する助言の検討中、以下の3つの主要な政策課題を特定した。
•政策課題1:データ基準を変更すべきか。
•政策課題2:現在のUSPの方法を変更すべきか。
•政策課題3:非比例再保険のための新しいUSP手法を導入すべきか。
政策課題1:データ基準を変更すべきか
688.ステークホルダーから受け取った提案は、主に、集計された損失が対数正規分布に従わなければならないという根本的な仮定を変更することに関連している。上で説明したように、保険料及び責任準備金リスクに関するSCR標準式の計算の基礎となるUSP手法の仮定は同じでなければならないため、これは不可能である。
689.承認されたUSPの数を考慮して、この政策オプションをもう検討しないことが決定された。
政策課題2:現在のUSP手法を変更すべきか
690.保険料リスクに対するUSPの方法を変更するための提案を受け取った。これらの提案には、この方針の選択肢をさらに検討しないという欠点があった。
691.主な欠点の1つは、保険料リスクに関するUSP手法の変更は、承認された全てのUSPを再提出する必要があることを意味し、これにより会社とNSAs(国家監督当局)に多大な労力がかかることになる。
692.その他の問題は、対数正規分布の前提を緩和することが提案されたか、又は提案された手法が標準式のパラメータを較正する際に使用されなかったため、手法が標準式の基礎となる前提を遵守していなかったことである。
政策課題3:非比例再保険のための新しいUSP手法を導入すべきか
693.委任規則第218条は、損害保険料及び責任準備金リスクサブモジュールにおいて、委任規則第117条(3)で言及された非比例再保険の調整要因が、会社固有のパラメータに取って代わられるということを規定している。
694.ステークホルダーは、「ストップロス」契約と呼ばれる一定の種類の非比例再保険契約に対して新しいUSP手法を導入するように提案した。以下のオプションが検討された。
オプション3.1 - 非比例再保険の調整係数に対するUSPの方法の数をストップロス契約に拡張する。
オプション3.2 - 非比例再保険の調整係数に対するUSPの方法の数をストップロス契約に拡張しない。
分析の結果、政策課題3(非比例再保険に関する新たなUSP手法を導入すべきか)に関しては、保険契約者の保護と(再)保険会社のリスク管理への便益に有利に働くことから、オプション3.1(非比例再保険のための調整係数のためのUSPの方法の数をストップロス契約に拡張する)が好ましい、としている。
9.9.3.オプションの比較
99.政策課題3(非比例再保険のための新しいUSP手法を導入すべきか)に関しては、オプション3.1(非比例再保険の調整係数に対するUSPの方法の数をストップロス契約に拡張する)が好ましい選択肢である。このような方法論の導入によって標準式の複雑さが増したとしても、保険契約者の保護と(再)保険会社のリスク管理に対する便益が、この選択肢に賛成する議論となっている。
4―まとめ
今回のCPに対する協議機関は8月末に終了するので、その時点で関係団体等からのコメントに関するリリースもなされることが想定される。いずれにしても、EIOPAは、これらのフィードバックを踏まえて、10月に提出する欧州委員会への助言を作成することになっている。
今回のCPはあくまでも前回のレポートで述べたように、ソルベンシーIIの第1段階のレビューに関する第1の助言セットである。今後、EIOPAは、年末までに、レビューされるべき以下の項目に対する第2の助言セットに関するCPを発行することとなっている。:(1)リスクマージン、(2)自己資本、(3)繰延税金の損失吸収能力に関する政策オプション、(4)カタストロフィーリスク、(5)保険料及び責任準備金リスク、(6)死亡率及び長寿リスク、(7)カウンターパーティ・デフォールトリスク、(8)グループレベルでの通貨リスク、(9)金利リスク、(10)ルックスルーの簡素化、(11)未評価債務、(12)非上場株式及び戦略的参加。
保険会社の観点からは、これらの第2の助言セットで取り扱われる項目(繰延税金の損失吸収能力を含む)に関する助言内容により関心が高いように想定される。
EIOPAの第2の助言セットは、2018年2月までに欧州委員会に提出される予定である。
ソルベンシーIIのレビューを巡る動向については、今後の国際的な保険資本規制の検討等にも影響を与えていくことも想定されることから、今回のCPに対する関係団体の反応を含めて、EIOPAの今後の対応等については引き続き注視していくこととしたい。
(2017年08月22日「基礎研レポート」)
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中村 亮一のレポート
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