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- 最近の人民元と今後の展開(2017年8月号)~「人民元ショック」の再発に御用心!
1――7月の人民元の動き
こうした外為市場の環境の下で、7月の人民元は米ドルに対して上昇したものの、ユーロドルの上昇に比べると小幅に留まったため、人民元はユーロに対して大きく下落することとなった(図表-2)。なお、日本円も人民元以上に米ドルに対して上昇したため、日本円に対する人民元レートは100日本円=6.0882元(1元=16.425円)と、前月末比0.8%のの元安・円高となった(図表-3)。
2――今後の展開
米中の経済金融動向を考えると、中国政府(含む中国人民銀行)は16年秋以降、住宅バブル退治に乗り出したため、景気指標の一部には陰りが見え始めている。しかし、17年1-6月期の実質成長率が17年目標(6.5%前後)を大幅に上回るなど、景気の勢いは想定以上に強く、住宅バブル膨張にも歯止めが掛かっていない(図表-4)。従って、中国の基準金利は年内にも引き上げられる可能性がある。
他方、米国では景気の持続的な拡大が続いており、今後も段階的に政策金利を引き上げると見られるものの、トランプ政権への期待が萎むとともに米国の長期金利は低下、米中長期金利差は縮小していない(図表-5)。従って、米利上げが先行して米中の短期金利差は縮小するものの、米中の長期金利差は縮小しない可能性が高いと見て、米ドルに対する人民元レートはほぼ横ばいと予想している。
現在の人民元を取り巻く環境は、15年8月に「人民元ショック」が起きた時と似た面がある。「人民元ショック」前の人民元は米ドルに対して長らく横ばいで推移していたが、前述のとおりユーロが14年に急落したため、ユーロと人民元の間には大きな乖離が発生、ユーロに対する人民元の割高感が高まっていた(図表-7)。その乖離を調整しようとしたことが「人民元ショック」の背景であった。一方、ここもとのユーロと人民元にも大きな乖離が生じ始めている。16年2月以降、人民元はバスケット通貨を参照して動くようになっており、米ドルに次いで比重の高いユーロドルの動きに3分の1前後の変動率で連動してきた。それでも、ユーロドルが狭いレンジで循環的に上下を繰り返しているうちは大きな乖離は生じなかったが、今回はユーロドルが一方向に動きだしたためユーロと人民元の水準に大きな乖離が生じてしまった(図表-8)。従って、人民元の値動きを安定させるために実施している中国人民銀行の行動が原因となって再び唐突な調整が起こる可能性が浮上したと考えられる。15年8月の「人民元ショック」とは逆方向ながらも、「第2の人民元ショック」には要注意である。
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三尾 幸吉郎
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(2017年08月02日「基礎研レター」)
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