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女性医療の現状(前編)-無理なダイエットは、高齢期にどのような影響をもたらすか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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0――はじめに
一方、日本では、晩婚化や晩産化も進んでいる。これらは、結婚、妊娠、出産を軸とした、女性の健康や医療に、密接に関係している。
これまで、女性医療は、産婦人科などとして、医学における確立した専門分野とされてきた。ただし、その内容は、高度なものが多く、医療関係者ではない一般の人が理解することは、必ずしも容易ではない。
このような状況を踏まえて、本稿と次稿の2回に分けて、女性医療の現状と、それを巡る様々な動きを、紹介していくこととしたい。まず、本稿では、前編として、最初に女性のライフサイクルを概観する。そして、その上で、胎児・幼児期から、思春期、性成熟期、妊娠・出産までを俯瞰していく。その際、各期の特徴や、代表的な健康課題・疾病について、述べていくこととする。
次稿では、後編として、更年期、老年期を中心に、女性のQOL (Quality of Life, 生活の質) の問題に焦点を当てる。そこでは、女性に象徴的な、骨粗鬆症やフレイルなどの疾患について、見ていくこととする。また、女性医療サービスの提供についても概観していく。そして、最後に、現在の女性医療の問題点について、私見を述べることとしたい。
なお、あらかじめ述べると、筆者は、医療関係者ではない。これまで、女性医療の知識は乏しかった。そのため、稿の執筆にあたり、基礎的な部分から、諸資料を閲覧することとなった。本稿と次稿が、女性医療に、あまりなじみのない男性を中心に、読者の関心と理解を深める一助となれば幸いである。
1――女性医療の重要性の高まり- 女性のライフサイクルの理解
女性医療が重要であると認識されるようになった背景には、人口の高齢化のほかに、女性のライフスタイルの多様化があると言われている。従来から、女性は、女性ホルモンの変動や、月経の周期により、心身の状態が影響を受けるとされてきた。近年は、これらに加えて、就労、結婚、妊娠、出産、育児、親の介護など、日常生活に影響をもたらすイベントが、個人ごとに、様々な時期に発生する(発生しないこともある)。その結果、女性のライフスタイルは、多様化している。こうしたイベントが、女性の心身の状態に、どのような影響を及ぼすかを見るために、女性医療の重要性が高まっている。
(1) 就労の多様化
女性の労働力人口比率を見ると、かつて見られたような、20歳代後半から30歳代にかけての、出産・育児を主因とする離職は減少している。いわゆる「M字カーブ」は徐々に上昇し、凹みが小さくなっている。2016年には、20~50歳代の全ての年齢層で、女性の労働力人口比率は、7割を上回っている。その結果、日常の労働環境の中で、女性就労者の健康・医療を捉える必要性が高まっている。
一方、出生数は、長期的に減少している。人口動態統計(厚生労働省)によると、2016年の出生数は97.7万人と、1899年の統計開始以来、初めて100万人を下回った。第1子出生時の母の平均年齢は上昇しており、2016年には、30.7歳となっている。
1 15歳から49歳の女性の、年齢別出生率を合計した指標。1人の女性が、平均して一生の間に産む、子どもの数を表す。
(2017年07月28日「基礎研レポート」)
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保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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