2017年07月27日

【7月米FOMC】予想通り政策金利を据え置き。バランスシート縮小開始時期の表現を前倒し

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.金融政策の概要:政策金利を据え置き。バランスシート縮小開始時期の表現を前倒し

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が7月25-26日(現地時間)に開催された。市場の予想通り、FRBは政策金利を据え置いた。

今回発表された声明文では、景気の現状認識部分で消費者物価指数が総合およびコア指数ともに前年同月比で低下している足元の状況を踏まえた表現に変更された。一方、景気見通しでは物価も含めて表現の変更は無かった。また、ガイダンス部分では、バランスシートの正常化に向けたバランスシート縮小開始時期の表記をこれまでの「年内」から「比較的早期」に前倒しした。

今回の金融政策は、全会一致で決定された。

2.金融政策の評価:金融政策見通しを変更するような新しい情報はなし

政策金利の据え置きは当研究所の予想通り。一方、物価については足元でインフレ率が低下しているものの、景気の見通し部分の表記に変更がなかったことから、現状では今後の金融政策の意思決定に影響を与えるとの判断はしていないとみられる。また、物価以外でも声明文の表現変更が小幅に留まっていることから、FRBの金融政策に対する考え方に大きな変更はなかったとみられる。

一方、バランスシートの縮小時期については、前回(6月)FOMC会合後の記者会見や、先日行われた議会証言でもイエレン議長がバランスシートの早期縮小開始に対する強い意欲を示していたため、縮小開始時期の表現変更に意外感はない。

FRBは、極端な景気悪化でない場合には金融政策手段として政策金利を活用するとしており、バランスシートの正常化は投資家にサプライズを与えない形で粛々と進める意向を示している。このため、資本市場が安定している場合には、多少物価が下振れしてもバランスシートの縮小を開始することが予想される。

当研究所は、9月にバランスシートの縮小開始、12月に0.25%の追加利上げを実施するとの従来の見通しを維持する。

3.声明の概要

(金融政策の方針)
  • FF金利の誘導目標を1.00-1.25%に維持(「引き上げ」から「維持」に変更)
  • 当分の間は、政府機関債、MBSの償還分はMBSへ再投資、米国債の償還分は米国債へ再投資(「当分の間は」”For the time being”を追加)
  • 委員会は、経済が予想通りの広範な進展をみせれば、バランスシートの正常化計画について比較的早期に開始することを見込んでいる(バランスシートの正常化計画の開始時期を「今年」”this year”から「比較的早期」”relatively soon”に前倒し)
  • この計画は、2017年6月の「委員会の政策正常化の原則と計画に関する補遺」に記載されている(前回あった「償還元本の再投資を減らすことで、連邦準備銀行が保有する証券残高を減らす」との説明部分が削除され「2017年6月」の時期を明記)。
 
(フォワードガイダンス、今後の金融政策見通し)
  • 既に実現した労働市場環境や物価、およびこれらの今後の見通しを考慮して、委員会はFF金利の目標レンジを1.00-1.25%に維持した(「引き上げ」から「維持」に変更)
  • 金融政策スタンスは依然として緩和的であるため、労働市場環境の幾分かの改善や、物価の2%への持続的な上昇を下支えする(変更なし)
  • FF金利の目標レンジに対する将来の調整時期や水準の決定に際して、委員会は経済の現状と見通しを雇用の最大化と2%物価目標に照らして判断する(変更なし)
  • これらの判断に際しては、雇用情勢、インフレ圧力、期待インフレ、金融、海外情勢など幅広い情報を勘案する(変更なし)
  • 委員会は、対称的な物価目標に関連させて、物価の実績と将来見通しを注意深くモニターする(変更なし)
  • 委員会は、FF金利の緩やかな上昇のみを正当化するような経済状況の進展を予想しており、暫くの間、中長期的に有効となる水準を下回るとみられる(変更なし)
  • しかしながら、実際のFF金利の経路は、今後入手可能なデータに基づく経済見通しによる(変更なし)
 
(景気判断)
  • 労働市場は引き続き力強さを増し、経済活動は年初来で緩やかに成長している(変更なし)
  • 雇用増加は緩やかとなったものの、年初来で均してみれば堅調であり、失業率は低下した(変更なし)
  • 家計消費および設備投資は拡大が続いた(前回の「家計消費はここ数ヵ月で持ち直した」”House hold spending has picked up in recent months”の表現を「設備投資は拡大が続いた」“the business fixed investment has continued to expand”と統合)
  • 前年比でみた総合および、食料品とエネルギーを除いたインフレ率は低下し、2%を下回った(前回「2%を下回った」とのみ表記されていた食料品とエネルギーを除くコアインフレ率についても、「低下した」”have declined“と表記された総合指数の表現に統合された)
  • 市場が織り込むインフレ率は、依然として低位に留まっている(変更なし)
  • ほとんどの調査に基づく長期物価見通しは、全般的に変化に乏しい(変更なし)
 
(景気見通し)
  • 委員会は、金融政策スタンスの漸進的な調整により、経済活動は緩やかに拡大し、労働市場の状況が更に強くなると予測している(変更なし)
  • 前年比でみたインフレ率は短期的には幾分2%を下回るものの、中期的に委員会の目標とする2%近辺で安定すると予想する(変更なし)
  • 経済見通しに対する短期的なリスクは概ねバランスしている(変更なし)
  • 委員会は、引き続きインフレ動向と世界経済および金融情勢を注視する(変更なし)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2017年07月27日「経済・金融フラッシュ」)

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