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- マイナス金利下における国内債券運用
2017年03月07日
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1――はじめに
マイナス金利で国内債券の運用は厳しい状況が続いている。国内債券はリスクが低く、他のリスクの高い資産(国内株式、外国証券など)と逆相関に働きポートフォリオ全体のリスクを抑える効果などがあることから、運用資産全体の中では大きな割合を占めていた。ところが、マイナス金利で収益がマイナスになるのではいくらリスクが低くても運用する意味がなく、国内債券以外(外国債券など)で運用する投資家が増えている。しかし、ポートフォリオの中核を占めていた国内債券全てをそれ以外の運用に変更することは困難で、また、国内債券以外の運用はやはり国内債券よりリスクが高いことが多いため、ある程度の金額を国内債券で引続き運用することは必要である。そこで、投資家はマイナス金利下でどのようにして国内債券を運用しているのかを紹介していきたい。
国内債券はほとんどの債券がマイナス利回りとなり、その中でプラス収益を確保することは難しくなっている。しかし、現在のマーケットは日銀が大規模な金融緩和を継続しているため、金利上昇リスクが非常に低いマーケットであるとも考えられる。債券マーケットにおいて、最も大きなリスクは金利上昇リスクであろう1。金利上昇を警戒しないで債券投資できるのであれば、投資の自由度は大幅に拡大する。現在のような低金利環境ではなく、高金利の時代においても、金利上昇は最も警戒しなければならないリスクである。たとえ高金利で将来の期待収益が高くても、金利が上昇すれば多額の損失を被る。仮に金利が上昇しなければ、金利上昇による損失の影響が大きい長期債への投資も比較的容易になる。こうした状況は特殊で好機とも考えられる。マイナス金利は厳しい運用環境ではあるが、このような状況の中でもプラスの収益機会を見つけることができれば、これまで以上に安全な運用を行うことができる。
一方、マイナス金利ではやはり収益を得ることは難しく、投資した時点で損失がほぼ確定してしまうようなケースも多い。どのような状況であればプラス収益を確保することが可能なのか、リスクを抑えながら運用していくことができるのか、適切に見極めていくことが必要である。単にマイナス金利で収益性が低いからという理由で国内債券全てを回避し、他のリスクの高い資産に投資するのではなく、リスクに見合うリターンを得られるのかどうか、国内債券も含め検討することで、より適切なポートフォリオを構築していくことが可能になる。
1 個別銘柄毎に見ると、信用リスクの方が大きいと考えられるケースもあるが、債券マーケット全体で見ると、市場リスクの方が大きいと考えられる。
国内債券はほとんどの債券がマイナス利回りとなり、その中でプラス収益を確保することは難しくなっている。しかし、現在のマーケットは日銀が大規模な金融緩和を継続しているため、金利上昇リスクが非常に低いマーケットであるとも考えられる。債券マーケットにおいて、最も大きなリスクは金利上昇リスクであろう1。金利上昇を警戒しないで債券投資できるのであれば、投資の自由度は大幅に拡大する。現在のような低金利環境ではなく、高金利の時代においても、金利上昇は最も警戒しなければならないリスクである。たとえ高金利で将来の期待収益が高くても、金利が上昇すれば多額の損失を被る。仮に金利が上昇しなければ、金利上昇による損失の影響が大きい長期債への投資も比較的容易になる。こうした状況は特殊で好機とも考えられる。マイナス金利は厳しい運用環境ではあるが、このような状況の中でもプラスの収益機会を見つけることができれば、これまで以上に安全な運用を行うことができる。
一方、マイナス金利ではやはり収益を得ることは難しく、投資した時点で損失がほぼ確定してしまうようなケースも多い。どのような状況であればプラス収益を確保することが可能なのか、リスクを抑えながら運用していくことができるのか、適切に見極めていくことが必要である。単にマイナス金利で収益性が低いからという理由で国内債券全てを回避し、他のリスクの高い資産に投資するのではなく、リスクに見合うリターンを得られるのかどうか、国内債券も含め検討することで、より適切なポートフォリオを構築していくことが可能になる。
1 個別銘柄毎に見ると、信用リスクの方が大きいと考えられるケースもあるが、債券マーケット全体で見ると、市場リスクの方が大きいと考えられる。
2――マイナス金利下でのロールダウン効果
現在は多くの国内債券がマイナス利回りになっている。2017年2月末のイールドカーブ(図表1)を見ると、0年から40年までの金利のうち、7年程度までがマイナス利回りで、それより長い期間の債券はプラス金利である。そのため、まだ多くの債券がプラス金利を維持しているようにも見える。しかし、債券の発行量は残存期間の短いゾーンにより多く集中している(図表2)。そのため、マイナス利回りの債券は全体の半分以上を占めている。

マイナス利回りの債券に投資して償還まで持ち続けると、当然その間の運用利回りはマイナスになり、損失は確定する。マイナス利回りの債券に投資した場合、償還まで持たずに途中で売却する必要がある。相場の上下を予想し、短期的なトレーディングをした場合、予想が当たれば収益を得ることができるが、予想が外れた場合には損失を被り、長期安定した収益を維持することは難しい。そこで、イールドカーブの傾きに着目し、長期安定した収益を得ることができないかを検証してみる。

現在のイールドカーブは0年金利がマイナス0.3%付近、10年金利がプラス0.1%付近であり、先の仮想イールドカーブよりも更にスティープ化(傾斜)している。そのため、図表4で提示した例よりも高い収益を得られる可能性が高い。尤も、いくらスティープ化していても、償還まで持ち切ると累計の損益はゼロになる。ロールダウン効果を狙うには1年間など一定期間運用したら売却して損益を確定する必要がある。
このように、マイナス利回りの債券に投資しても必ずしもマイナス収益になるとは限らない。イールドカーブがスティープ化しているときに、残存期間の長い債券に投資すればプラス収益を確保できる可能性は高く、そこから金利が低下すれば更に高い収益を得られる。マーケット環境にもよるが、現在のように日銀がイールドカーブ・コントロールとしてイールドカーブがスティープ化するように誘導している状況においては、ロールダウン効果を狙うのに非常に適した相場環境の可能性がある。
日銀は更に、オーバーシュート型コミットメントとして、金利を将来も低位安定させることを約束している。今後必要な場合は更に金利を引き下げるともしている。この約束は、物価(消費者物価指数<除く生鮮食品>の前年比上昇率の実績値)が安定的に2%を超えるまで、継続するとしている。2%を安定的に超えるまでということは、2~3%程度の間で推移するような状況と考えられる。これは、現在0%以下で推移していることからすると、かなり遠い目標になる。今後、物価の大幅な上昇が見通せない限り、金利上昇リスクを警戒する必要はないと考えられる。
マイナス金利だからとしてすぐに国内債券を投資対象から外すのではなく、マイナス利回りの債券でもプラス収益を得られる可能性があるということを考慮し、そのリスクやリターンを適切に把握し、他の運用資産のリスクやリターンと比較していくことも必要であろう。
このように、マイナス利回りの債券に投資しても必ずしもマイナス収益になるとは限らない。イールドカーブがスティープ化しているときに、残存期間の長い債券に投資すればプラス収益を確保できる可能性は高く、そこから金利が低下すれば更に高い収益を得られる。マーケット環境にもよるが、現在のように日銀がイールドカーブ・コントロールとしてイールドカーブがスティープ化するように誘導している状況においては、ロールダウン効果を狙うのに非常に適した相場環境の可能性がある。
日銀は更に、オーバーシュート型コミットメントとして、金利を将来も低位安定させることを約束している。今後必要な場合は更に金利を引き下げるともしている。この約束は、物価(消費者物価指数<除く生鮮食品>の前年比上昇率の実績値)が安定的に2%を超えるまで、継続するとしている。2%を安定的に超えるまでということは、2~3%程度の間で推移するような状況と考えられる。これは、現在0%以下で推移していることからすると、かなり遠い目標になる。今後、物価の大幅な上昇が見通せない限り、金利上昇リスクを警戒する必要はないと考えられる。
マイナス金利だからとしてすぐに国内債券を投資対象から外すのではなく、マイナス利回りの債券でもプラス収益を得られる可能性があるということを考慮し、そのリスクやリターンを適切に把握し、他の運用資産のリスクやリターンと比較していくことも必要であろう。
(2017年03月07日「基礎研レポート」)
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千田 英明
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