2017年03月01日

法人企業統計16年10-12月期~企業収益の急回復を受けて設備投資も持ち直し、10-12月期の成長率は上方修正へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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3.設備投資は製造業中心に持ち直し

設備投資(ソフトウェアを含む)の推移 設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比3.8%(7-9月期:同▲1.3%)と2四半期ぶりの増加となった。製造業(7-9月期:前年比▲1.4%→10-12月期:同7.4%)が2四半期ぶり、非製造業(7-9月期:前年比▲1.3%→10-12月期:同1.9%)が3四半期ぶりに増加した。

季節調整済の設備投資(ソフトウェアを除く)は前期比3.5%と3四半期ぶりに増加した。製造業(7-9月期:前期比▲3.6%→10-12月期:同7.4%)、非製造業(7-9月期:前期比2.1%→10-12月期:同1.3%)ともに増加した。

円高や新興国経済の減速に伴い16年前半の企業収益は大きく悪化したが、円高一巡や世界的な製造業サイクルの改善を受けて、年末にかけて急回復を見せた。設備投資は企業収益の悪化を反映し16年7-9月期には14四半期ぶりの減少となったが、10-12月期には早くも増加に転じた。

昨日(2/28)、内閣府から公表された「企業行動アンケート調査(16年度)」では、企業の今後3年間、5年間の実質成長率の見通し(いわゆる期待成長率)がそれぞれ1.1%、1.0%にとどまった(前年度はそれぞれ1.0%、1.1%)。このため、企業の設備投資意欲が大きく高まることは期待できないが、企業収益の増加にやや遅れる形で先行きの設備投資は持ち直しの動きが明確となることが予想される。
労働分配率(季節調整値)の推移 16年10-12月期の労働分配率(当研究所による季節調整値)は59.2%と2四半期連続で低下した。労働分配率はリーマン・ショック後の09年初め頃をピークに低下傾向が続いた後、企業収益が悪化した15年後半から16年初めにかけていったん上昇したが、16年後半の企業収益の改善を反映し再び低下し始めた。足もとの労働分配率は90年代初頭のバブル期とほぼ同水準となっている。

人件費は14年7-9月期以降、前年比で増加を続けているが、企業収益は過去最高水準にあり、企業の賃上げ余力は十分にあるといえるだろう。

4.10-12月期・GDP2次速報は上方修正を予想

2016年10-12月期GDP2次速報の予測 本日の法人企業統計の結果等を受けて、3/8公表予定の16年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.4%(前期比年率1.6%)となり、1次速報の前期比0.2%(前期比年率1.0%)から上方修正されると予測する。

設備投資は前期比0.9%から同1.7%へと上方修正されるだろう。設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比3.3%(7-9月期:同▲1.4%)と2四半期ぶりに増加した。一方、金融保険業の設備投資は前年比▲8.2%と減少幅が拡大した(7-9月期:同▲1.5%)。法人企業統計ではサンプル替えに伴う断層が生じるため、当研究所でこの影響を調整したところ、設備投資の伸びは前年比で3%台と公表値とほぼ同じ伸びとなった。GDP・1次速報の設備投資は名目・前年比0.9%となっており、本日の法人企業統計の結果は設備投資の上方修正要因と考えられる。

民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映され若干上方修正されるが、寄与度ベースでは1次速報の前期比▲0.1%から変わらないだろう。その他の需要項目では、12月の建設総合統計が反映されることなどから、公的固定資本形成が1次速報の前期比▲1.8%から同▲2.3%へと下方修正されると予想する。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2017年03月01日「経済・金融フラッシュ」)

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