2017年01月25日

EIOPAによる2016年度保険ストレステストの結果について(2)-EIOPAの報告書の概要報告-

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3―ストレステストの結果-(1)貸借対照表ベースの指標-

この章では、「(1)貸借対照表ベースの指標」について報告する。

1|会社全体のAOL比率への影響
会社全体のAOL比率は、ベースラインシナリオで109.6%であるのに対して、ダブルヒットシナリオでは2.19%ポイント低下し、長期低利回りシナリオでは2.22%ポイント低下と、いずれのシナリオでもほぼ2%ポイント程度低下する。

ただし、これは実額ベースでの資産と負債の変化の動きが2つのシナリオで異なるのに対して、両者の比率ベースで見た場合の影響が同程度になっていることによるものである。資産と負債の影響度の観点からみると、実態的にはダブルヒットシナリオの方が影響が大きくなっている。

2|会社毎のAOL比率への影響
AOL比率の会社毎の分布は、次ページの図表の通りであり、会社毎に大きく異なっている。

AOL比率が1を下回る会社のサンプル全体に対する総資産ベースの割合は、ベースラインの0%が、ダブルヒットシナリオで1.4%、長期低利回りシナリオで0.9%となる。

AOL比率が1.2を超える会社の割合は、ベースラインで30%、ダブルヒットシナリオで22%、長期低利回りシナリオで26%となる。
図表 AOL 比率の会社数分布(ストレス前後)
3|国別のAOL比率への影響
国別のAOL比率の状況は、以下の図表の通りとなっている。影の部分は、LTG措置や移行措置の影響を示している。これにより、国別に、AOL比率の水準、ストレスシナリオの影響、LTG措置や移行措置の影響の状況が大きく異なっていることが示されている。

ダブルヒットシナリオでは、ベルギー、エストニア、クロアチア、リトアニア、ポーランド、スウェーデン及びスロベニアの7カ国が、AOLで5%以上の大きな影響を受けている。これらの国はベルギーを除いて、いかなるLTG措置や移行措置も適用していない、ことが1つの理由になっている。
図表 国別のAOL 比率の状況(ストレス前後、LTG 及び移行措置の影響)
一方で、長期低利回りシナリオでは、オーストリア、エストニア、リトアニア及びスウェーデンの4カ国のみがAOLで5%以上の大きな影響を受けている。これは、長期低利回りシナリオの下では、UFR(終局フォワードレート)を使用していることから、例えば、スウェーデンのようにLLP(最終流動性ポイント)が(最も典型的な20年ではなくて)10年の国では、UFRの引き下げによる影響が大きくなることによる。これに対して、LLPが50年の英国では影響が比較的小さくなっている。

前ページの図表は、LTG及び移行措置の適用によるAOL比率への影響も示している。

これによれば、ダブルヒットシナリオでは、いくつかの国において、100%以上のAOL比率を維持するために、LTG及び移行措置が重要なものとなっている。

これに対して、長期低利回りシナリオでは、これらの措置の位置付けは小さなものとなっており、いかなる国も100%以上の加重平均AOL比率を維持するために、これらの措置に依存していない。

個別会社レベルでは、参加会社の10%が長期低利回りシナリオで100%水準を維持するために、LTG及び移行措置を必要としている。

LTG及び移行措置は、市場が急激に変化した場合に、保険会社の貸借対照表に対する緩衝効果を有しているが、低金利のようなより長期の懸念の影響は、これらの措置によって、より小さな程度の影響しか受けない。

以下の図表が国別のAOL比率の変化を示している。

殆どの国では、ダブルヒットシナリオの方が長期低利回りシナリオよりも高い影響度となっているが、オーストリア、ドイツ、フィンランド、アイルランド、オランダ、英国では、長期低利回りシナリオの方が高い影響度となっている。
図表 国別のAOL比率への影響
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中村 亮一

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