- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- アジア経済 >
- 中国経済:過剰債務問題の本質と展望
2016年09月23日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1――巨大化した中国非金融企業の債務
債務残高のこれまでの推移を見ると、リーマンショック前の2007年には対GDP比152.4%だったものが、2015年には同254.8%と102.4ポイントも増えている。貸出先別の内訳を見ると、一般政府向けは2007年の34.8%から2015年には44.4%へと9.6ポイント上昇、家計向けは2007年の19.0%から2015年には39.5%へと20.5ポイント上昇に留まったのに対して、非金融企業向けは2007年の98.7%から2015年には170.8%へと72.1ポイントも上昇している(図表-2)。リーマンショック後の2009年、世界経済がマイナス成長に落ち込む中で、中国経済はインフラ投資を加速させて前年比9.2%増の高成長を保ち、世界経済が悪循環に陥るのを食い止めるアンカー役となった。しかし、その背後では中国の非金融企業が債務残高を急増させて投資を加速させていたのである。
また、中国の債務残高(対GDP比)を国際比較して見ると、一般政府向けはG20平均(65.9%)を21.5ポイント下回り、家計向けもG20平均(47.3%)を7.8ポイント下回っているものの、非金融企業向けはG20平均(70.3%)を100.5ポイントも上回っており、突出して大きい(図表-3)。
また、中国の債務残高(対GDP比)を国際比較して見ると、一般政府向けはG20平均(65.9%)を21.5ポイント下回り、家計向けもG20平均(47.3%)を7.8ポイント下回っているものの、非金融企業向けはG20平均(70.3%)を100.5ポイントも上回っており、突出して大きい(図表-3)。
2――巨大化した債務が調整する局面とは?
1|債務がピークアウトする水準
それでは、非金融企業の債務残高は一般にどの水準で限界を迎えてピークアウトするのだろうか。日本の場合を振り返ると、非金融企業の債務残高はバブル崩壊後の1994年に対GDP比149.2%でピークアウトした。これは現在の中国をやや下回る水準である。その後、日本では非金融企業の債務残高が減少に転じ、ここ10年は100%前後で推移している。また、韓国とタイはアジア通貨危機後の1990年代後半に115%前後でピークアウトしている(図表-4)。従って、アジア諸国の例から見ると中国の非金融企業の債務残高は限界を超えていると考えられなくもない。しかし、欧州諸国の場合を見ると、ベルギーでは2009年に150%弱の水準で一旦ピークアウトしたものの、その後の調整は小幅で短期間に留まり、最近では2009年のピークを上回ってきた。また、ピークアウトする水準も様々で、英国では2009年の100%弱がピークとなった一方、アイルランドでは2012年に220%超まで上昇してから調整局面を迎えることとなった(図表-5)。従って、債務残高の対GDP比など債務面を見ただけでは、中国の非金融企業の債務残高がどの水準でピークアウトするのかを判断するのは難しいといえるだろう。
それでは、非金融企業の債務残高は一般にどの水準で限界を迎えてピークアウトするのだろうか。日本の場合を振り返ると、非金融企業の債務残高はバブル崩壊後の1994年に対GDP比149.2%でピークアウトした。これは現在の中国をやや下回る水準である。その後、日本では非金融企業の債務残高が減少に転じ、ここ10年は100%前後で推移している。また、韓国とタイはアジア通貨危機後の1990年代後半に115%前後でピークアウトしている(図表-4)。従って、アジア諸国の例から見ると中国の非金融企業の債務残高は限界を超えていると考えられなくもない。しかし、欧州諸国の場合を見ると、ベルギーでは2009年に150%弱の水準で一旦ピークアウトしたものの、その後の調整は小幅で短期間に留まり、最近では2009年のピークを上回ってきた。また、ピークアウトする水準も様々で、英国では2009年の100%弱がピークとなった一方、アイルランドでは2012年に220%超まで上昇してから調整局面を迎えることとなった(図表-5)。従って、債務残高の対GDP比など債務面を見ただけでは、中国の非金融企業の債務残高がどの水準でピークアウトするのかを判断するのは難しいといえるだろう。
(2016年09月23日「基礎研レポート」)
三尾 幸吉郎
三尾 幸吉郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/05/23 | 図表でみる世界の外為レート-世界各地の通貨をランキングすると、日本円はプラザ合意を上回るほどの割安で、人民元はさらに安い | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
2025/04/15 | 図表でみる世界の民主主義-日本の民主主義指数は上昇も、世界平均は低下。世界ではいったい何が起きているのか? | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
2024/12/16 | 図表でみる世界のGDP-日本が置かれている現状と世界のトレンド | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
2024/07/30 | 図表でみる世界の人口ピラミッド | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
新着記事
-
2025年06月26日
中国:25年4~6月期の成長率予測-前期から減速。外需が減速し始めた一方、政策効果で安定は維持 -
2025年06月26日
新NISAの利用実態~利用状況調査:2024年12月末時点(確報値)を踏まえて~ -
2025年06月26日
自社株買いの取得期間は長期化、より柔軟な買付姿勢へ~2025年4-5月の自社株買い動向~ -
2025年06月26日
マスク着用のコミュニケーションへの影響(2)-コロナ禍の研究を経て分かっていること/いないこと -
2025年06月25日
退職世代の家計の実際-統計で見る退職世代の貯蓄・消費
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
【中国経済:過剰債務問題の本質と展望】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
中国経済:過剰債務問題の本質と展望のレポート Topへ