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中国経済:景気指標の総点検と今後の注目点(2016年夏季号)~景気評価点は「低位」から「中位」に改善

三尾 幸吉郎
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物価も景気と密接な関係がある。モノに対する需要が強ければ値段は上がり、需要が弱ければ下がるからである。足元の動きを見ると、5月の工業生産者出荷価格は前年同月比2.8%下落と直近最低値(同5.9%下落、昨年8-12月)に比べるとマイナス幅を縮小してきている。生産財は原油価格などの反転を受けて前年同月比3.7%下落とマイナス幅を大きく縮小、川上に位置する産業ほどマイナス幅の縮小傾向が鮮明となっている(図表-11)。一方、消費財への影響は今のところ限定的で、食品はやや上昇したものの、衣類の上昇率に大きな変化はなく、耐久消費財はむしろ下落傾向を強めている(図表-12)。消費財に対する需要の弱さを示唆するものと思われる。
金融面から景気動向を見る指標としては通貨供給量(M2)が挙げられる。足元の動きを見ると、5月は前年同月比11.8%増と、「13%前後」とされた2016年の政府見通しを大きく下回った(図表-13)。内訳を見ると「その他預金」の伸びの鈍化が目立っており、昨年夏に中国政府が打ち出した株価安定策の反動と見られる。従って、M2が高い伸びを回復するのは当面難しいと思われる。一方、融資サイドから見ると、5月の融資残高は前年同月比14.4%増と昨年夏をピークに伸びが鈍化してきている。但し、投資に結び付くことの多い中長期融資に関しては、5月も同15.9%増と伸びを高めていることから、投資への影響は限定的と見ている(図表-14)。
4.景気評価点と今後の注目点
今後の注目点としては以下3点が挙げられる。第1に4-6月期GDP(7/15公表)である。1-3月期の実質成長率は前年同期比6.7%増と減速が継続したが、4-6月期はさらに減速するのかそれとも減速に歯止めが掛かるのか注目される。ちなみに当研究所で開発した月次GDP推計モデルでは、4月は前年同月比6.6%増、5月は同6.5%増と、1-3月期の前年同期比6.7%増を下回る水準で推移している。第2に民間投資の動向が挙げられる。今年1-5月期の投資はインフラ投資や不動産投資が高い伸びを示したことで小幅な減速に留まったが、前述のとおり民間投資の落ち込みは厳しい。下半期は投資の6割を占める民間投資の動向に注目したい。第3に輸出の動向が挙げられる。前述のとおり新規輸出受注は回復してきたが、まだ実際の輸出増には結び付いていない。世界経済の回復が緩やかと想定される中で、どこまで回復するか今後の動きに注目したい。
(2016年06月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
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