2015年09月01日

法人企業統計15年4-6月期~企業収益は過去最高を更新も、設備投資は盛り上がらず

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・製造業、非製造業ともに大幅増益
・設備投資は盛り上がらず
・4-6月期・GDP2次速報は下方修正を予測

■要旨

財務省が9月1日に公表した法人企業統計によると、15年4-6月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比23.8%と14四半期連続で増加し、1-3月期の同0.4%から伸びが大きく加速した。製造業(前年比29.6%)、非製造業(前年比20.8%)ともに前年比で20%台の大幅増益となった。
製造業は大幅な円安にもかかわらず輸出数量が減少したことから売上高は前年比1.2%と伸び悩んだが、売上高経常利益率が14年4-6月期の6.0%から7.7%へと大きく改善したことが大幅増益につながった。原油価格下落の効果から変動費要因が利益率を前年差1.3ポイントと大きく押し上げた。非製造業も個人消費の低迷などから売上高は前年比1.1%と低調だったが、売上高経常利益率が14年4-6月期の4.9%から5.8%へと改善したことが収益を押し上げた。製造業と同様に変動費要因が利益率を前年差1.1ポイント大きく押し上げた。
季節調整済の経常利益は前期比14.8%(1-3月期:同▲4.1%)と13年4-6月期以来の前期比二桁の高い伸びとなった。製造業が前期比23.8%、非製造業が前期比10.3%であった。15年4-6月期の経常利益(季節調整値)は19.2兆円となり過去最高だった14年10-12月期(17.5兆円)を大きく上回った。非製造業が過去最高水準の更新を続ける一方、製造業はリーマン・ショック前のピーク時を超えられずにいたが、15年4-6月期の大幅増益により07年4-6月期を小幅ながら上回り、過去最高水準を更新した。

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比5.6%と9四半期連続で増加したが、1-3月期の同7.3%から伸びが鈍化した。製造業(1-3月期:前年比6.4%→4-6月期:同11.6%)は伸びが加速したが、非製造業(1-3月期:前年比7.8%→4-6月期:同2.6%)の伸びが大きく鈍化した。
企業収益が好調を続ける中で設備投資が伸び悩んでいるため、企業の設備投資意欲を示す「設備投資/キャッシュフロー比率」は50%台半ばの低水準で推移している。また、労働分配率(当研究所による季節調整値)は58.9%と91年7-9月期以来の50%台まで低下した。企業収益が過去最高を更新する中でも企業の設備投資、人件費抑制姿勢は変わっていない。

本日の法人企業統計の結果等を受けて、9/8公表予定の15年4-6月期GDP2次速報では、設備投資が1次速報の前期比▲0.1%から同▲1.6%へと下方修正されることなどから、実質GDPが前期比▲0.5%(年率▲2.0%)と1次速報の前期比▲0.4%(年率▲1.6%)から下方修正されると予測する。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2015年09月01日「経済・金融フラッシュ」)

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