2015年06月01日

法人企業統計15年1-3月期~増益率は大幅鈍化も、設備投資に明るさ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・製造業が3四半期ぶりの減益
・設備投資に明るさも本格回復には時間がかかる
・1-3月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

■要旨

財務省が6月1日に公表した法人企業統計によると、15年1-3月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比0.4%と13四半期連続で増加したが、10-12月期の同11.6%から伸びが大きく低下した。非製造業が前年比1.2%(10-12月期:同8.3%)と伸びが鈍化したことに加え、製造業が前年比▲1.3%と3四半期ぶりの減益となった。
製造業の売上高は、輸出の持ち直しを受けてはん用機械(前年比9.6%)、電気機械(同8.3%)、輸送用機械(同3.6%)は増加したものの、原油価格下落の影響で石油・石炭が前年比▲27.0%の大幅減少となったことなどから、全体では前年比▲3.9%の減少となった。売上高経常利益率は14年1-3月期の5.2%から5.4%へと若干改善したが売上高の落ち込みをカバーするには至らなかった。原油価格下落の効果から変動費要因は利益率を押し上げたが、人件費、減価償却費要因がマイナスとなったため、売上高経常利益率の改善は小幅にとどまった。
非製造業の売上高は情報通信業(前年比9.0%)、運輸・郵便業(同17.8%)が高い伸びとなったものの、個人消費の持ち直しが緩慢にとどまっていることを反映し、卸売・小売業が前年比▲2.8%の減少となったことなどから、全体では10-12月期の前年比3.4%から同0.9%へ伸びが鈍化した。非製造業の売上高経常利益率は5.0%となり、前年同期と変わらなかった。製造業と同様に変動費要因は利益率を押し上げたが、人件費の伸び(前年比2.3%)が売上高の伸び(同0.9%)を上回ったため、人件費要因がマイナスとなった。

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比7.3%と8四半期連続で増加し、10-12月期の同2.8%から伸びを高めた。製造業(10-12月期:前年比8.0%→1-3月期:同6.4%)は伸びが鈍化したが、非製造業(10-12月期:前年比0.3%→1-3月期:同7.8%)の伸びが加速した。
これまでは企業収益が好調を続ける中で、設備投資の出遅れが目立っていたが、15年1-3月期は企業収益が弱い動きとなる一方、設備投資の伸びが加速した。ただし、設備投資の水準は依然としてキャッシュフローを大きく下回っており、企業の国内投資に対する慎重な姿勢が依然根強いことを示している。企業の中長期的な期待成長率が高まることによって国内設備投資の回復が本格化するまでには時間がかかるだろう。

本日の法人企業統計の結果等を受けて、6/8公表予定の15年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.6%(年率2.3%)と1次速報の前期比0.6%(年率2.4%)とほぼ変わらないと予測する。設備投資が前期比0.4%から同1.6%へ上方修正される一方、民間在庫が前期比・寄与度0.5%から同0.2%へ下方修正されるだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2015年06月01日「経済・金融フラッシュ」)

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