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- 固定価格買取制度スタート-国民は相次ぐ負担に耐えられるか
7月1日再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートした。この制度は再生可能エネルギーを普及させるため、電力会社が再生エネルギー発電事業者から電力を買い取る制度である。その買い取った分は賦課金というカタチで電気料金に上乗せされる。つまり、国民が負担するのだ。2012年度の賦課金は、標準家庭で全国平均月87円(年換算1,044円)iになるようだ。この金額なら環境税とみなして受け入れる人は大勢いるだろう。
日本では始まったばかりの買取制度だが、ドイツでは同制度が先行してスタートしている。ドイツは買取条件を事業者側に有利に設定したことから、再生可能エネルギーの電源構成比は2001年6.7%から2011年20.0%iiへと大幅に拡大したものの、一般家庭の賦課金は2011年で月1,200円程度(年換算14,400円程度)iiiまで増加した。ドイツ国民は大反発し、今年に入って太陽光では買取価格を20~30%も引き下げ、全量買取廃止も決まるなど制度の迷走ぶりが目立っている。
日本の制度も、ドイツのように電気料金が大幅に上がる仕組みになっている。電力会社は最長で20年間も継続して、最初に適用された価格で全量を買い取らなければならないため、賦課金は年々増えていくことになる。さらに、日本の買取価格は総じてドイツの倍以上であり、事業者側の利潤も制度開始3年間はドイツ(金利差考慮後の税引前IRR:5~6%)対比+1~2%上乗せし、4年目以降はドイツ並みivとなることから、賦課金はドイツのように高くなることは明らかだ。どれほど電気料金が増えるかは、今夏に決まるエネルギー政策や資源価格など色々な要因に左右されるが、政府の試算によると電気料金は月1万円の家庭で2030年に1.2~2.1万円に増えるv(図表1)としている。
財政再建が『待ったなし』とされるなかでは、国民の負担は増える一方だ。消費増税も法案通過が見通され、今後も社会保障改革で年金や医療など社会保障給付費の削減も予想される。その上で電気料金が年々上がっていく現実を、国民はどこまで受け入れることができるのだろうか。賦課金がピークをつく15~20年後になっても福島原子力発電所の事故や電力不足の記憶が日本のなかで強く残っていることを願う一方、発電事業者の利潤を確保しつつも市場原理が働きコスト競争が進むような仕組みを導入するなど、政府には持続可能な制度に向け見直しを進めてもらいたい。
(2012年07月12日「研究員の眼」)
03-3512-1780
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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