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- 欧州の不良債権問題と住宅バブルの崩壊
2009年07月10日
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- 欧州の金融危機は複合危機の様相を呈している。景気の後退に伴う貸出債権の不良化はこれからが本番で、対米証券化商品投資の損失よりも大きいものとなる可能性が高い。中でも、住宅ローンの不良債権問題が過去のトレンドを大きく超えるレベルまで進み、想定以上に損失が増大するリスクが懸念されよう。
- 今後の動向が注視されるイギリスとスペインのうち、イギリスでは、大胆な政策対応もあって住宅価格の下落ペースは鈍化しつつある。しかし、雇用情勢や家計の負債水準の高さを考えると本格回復には時間を要し、住宅ローンの延滞率上昇は続きそうだ。
- スペインは、住宅供給の過剰の度合いが大きく、一層の価格調整と不良債権比率の上昇が避けられそうにない。特に、一部の貯蓄銀行の経営状況への不安は強い。スペインは、ユーロ導入で為替調整による景気回復という手段は封じられた見返りにECBの低金利政策と非標準的手段によるサポートを受けている。スペインが、金融不安の早期収拾と持続的な成長軌道への回帰を実現できるのか、欧州域内の金融の正常化ばかりでなく、ユーロの将来性を占う試金石として注目したい。
(2009年07月10日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2015~2024年度 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017~2024年度 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022~2024年度 Discuss Japan編集委員
・ 2022年5月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
・ 2024年10月~ 雑誌『外交』編集委員
・ 2025年5月~ 経団連総合政策研究所特任研究主幹
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