2009年05月15日

BIS統計から捉えた欧州の金融危機

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  1. 統合が進む欧州では、域内における銀行の対外与信が膨らんでいたことから、2008年中の与信の削減が特に目立ち、金融危機のインパクトの大きさがうかがわれる。
  2. 途上国・新興国向けの与信は、97年のアジア危機を遥かに上回る金額が、極めて短い期間で削減された。地域ごとのばらつきが小さく、一様に削減の圧力に見舞われた点も出し手の銀行側の事情がより強く働いた今回の危機の特徴と言えよう。流出の圧力が一様に働いたのに対して、外貨繰りに行き詰まった国が欧州新興国に集中したのは、外資系銀行の与信への依存度が高く、国際収支構造が脆弱であったためであろう。
  3. BIS統計で把握できるのは2008年12月末までだが、市場の動きを見る限り、2009年入り後も対外与信の削減傾向は続いたものと思われる。一時期に比べると欧州市場も落ち着きを取り戻しているが、各国中央銀行による潤沢な流動性供給や国際通貨基金(IMF)などの公的な支援に支えられている面は大きいと思われる。
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(2009年05月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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