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- 「格差」と「多様性」 - 悪い”違い”・良い”違い”
コラム
        2007年09月20日
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                                            少子高齢化が進展し、これから本格的な人口減少時代を迎える日本は、規制緩和をはじめとした徹底的な構造改革が求められている。あらゆる分野で市場原理が導入され、効率的な社会経済の運営が不可欠だ。しかし、その結果、所得格差、雇用格差、情報格差、教育格差、地域格差など、多くの「格差」が発生して、日本は格差社会になりつつあることも事実だ。先の参議院選挙でもこの格差問題がひとつの大きな争点になったが、市場競争のなかでさまざまな“違い”が発生するのは当然の帰結でもある。
社会に“違い”が生じることは決して悪いことではない。問題は、その“違い”が「格差」なのか「多様性」なのかという点である。「格差」とは自分の努力や意志ではどうすることもできない他律的に決められた社会の枠組みであり、「多様性」は自らが選択できる自律的なものだ。したがって、単に“違い”があることだけを捉えて「格差」だということもできないし、「格差」となった“違い”を「多様性」とすり替えてはならないのである。今日の重大な課題は、日本社会がさまざまな“違い”を「多様性」として捉えることが難しい状況にあることではないだろうか。
近年では若者の非正規雇用が増加しているが、成熟社会では正規雇用だけではなく多様な就労形態を選択できることが重要だ。もし、若者自らが自分の価値観に基づくライフスタイルから非正規雇用を選択しているとすれば、その“違い”は「多様性」といえよう。しかし、正規雇用を望むにもかかわらず非正規で働き続けざるを得ず、いつまでも貧困から抜け出せないワーキングプアが存在するならば、その就労形態の“違い”は「格差」である。
21世紀は国民のニーズも価値観も多様となり、国家も企業も多様性(Diversity)が求められる時代だ。同質性の強い国家や企業は、ある特定方向の力が作用するともろく崩壊するだろう。だからさまざまな方向から外力が働く成熟社会では、国家も企業も多様性に富んだ人材ポートフォリオが不可欠なのである。
そのような社会を築くためには、悪い“違い”を 良い“違い”に、すなわち「格差」を「多様性」に転換することが必要だ。そのためには階層間の移動が困難で“違い”を固定化するような社会制度を見直し、弱者が安心して暮らすためのセーフティネットの整備を図ることが重要である。そしてさらに年齢や性別などに制約されない『個を活かす』社会づくりを行わなければならない。明治時代の女流詩人・金子みすヾの有名な詩「私と小鳥と鈴と」の最後の一節には、『みんなちがって、みんないい』とある。卓見だと思う。
            社会に“違い”が生じることは決して悪いことではない。問題は、その“違い”が「格差」なのか「多様性」なのかという点である。「格差」とは自分の努力や意志ではどうすることもできない他律的に決められた社会の枠組みであり、「多様性」は自らが選択できる自律的なものだ。したがって、単に“違い”があることだけを捉えて「格差」だということもできないし、「格差」となった“違い”を「多様性」とすり替えてはならないのである。今日の重大な課題は、日本社会がさまざまな“違い”を「多様性」として捉えることが難しい状況にあることではないだろうか。
近年では若者の非正規雇用が増加しているが、成熟社会では正規雇用だけではなく多様な就労形態を選択できることが重要だ。もし、若者自らが自分の価値観に基づくライフスタイルから非正規雇用を選択しているとすれば、その“違い”は「多様性」といえよう。しかし、正規雇用を望むにもかかわらず非正規で働き続けざるを得ず、いつまでも貧困から抜け出せないワーキングプアが存在するならば、その就労形態の“違い”は「格差」である。
21世紀は国民のニーズも価値観も多様となり、国家も企業も多様性(Diversity)が求められる時代だ。同質性の強い国家や企業は、ある特定方向の力が作用するともろく崩壊するだろう。だからさまざまな方向から外力が働く成熟社会では、国家も企業も多様性に富んだ人材ポートフォリオが不可欠なのである。
そのような社会を築くためには、悪い“違い”を 良い“違い”に、すなわち「格差」を「多様性」に転換することが必要だ。そのためには階層間の移動が困難で“違い”を固定化するような社会制度を見直し、弱者が安心して暮らすためのセーフティネットの整備を図ることが重要である。そしてさらに年齢や性別などに制約されない『個を活かす』社会づくりを行わなければならない。明治時代の女流詩人・金子みすヾの有名な詩「私と小鳥と鈴と」の最後の一節には、『みんなちがって、みんないい』とある。卓見だと思う。
(2007年09月20日「研究員の眼」)
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