2016年12月28日

鉱工業生産16年11月~生産の回復基調が明確に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.在庫調整がさらに進展

経済産業省が12月28日に公表した鉱工業指数によると、16年11月の鉱工業生産指数は前月比1.5%(10月:同0.0%)となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.7%、当社予想は同1.4%)通りの結果となった。出荷指数は前月比0.9%と3ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比▲1.5%と3ヵ月連続の低下となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 在庫指数は消費税率引き上げ後の需要の低迷を受けて約2年にわたって高止まりしていたが、16年度に入ってからは低下傾向が続いており、ここにきてそのペースが加速している。

11月の生産を業種別に見ると、国内販売の持ち直し、在庫調整の進展を受けて輸送機械が前月比2.0%と2ヵ月ぶりに上昇したほか、新型スマートフォン関連需要で好調が続く電子部品・デバイスが前月比3.6%の高い伸びとなるなど、速報段階で公表される15業種中11業種が前月比で上昇した(4業種が低下)。
財別の出荷動向 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は16年7-9月期の前期比1.0%の後、10月が前月比2.1%、11月が同2.2%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は16年7-9月期の前期比▲1.6%の後、10月が前月比3.4%、11月が同0.5%となった。10、11月の平均を7-9月期と比較すると資本財出荷(除く輸送機械)は3.5%、建設財出荷は2.1%高い水準となっている。

16年7-9月期のGDP統計の設備投資は前期比▲0.4%の減少となったが、円高を主因として急速に落ち込んだ企業収益はすでに最悪期を過ぎている可能性が高い。設備投資は今後持ち直しに向かうことが予想される。

消費財出荷指数は16年7-9月期の前期比0.9%の後、10月が前月比3.8%、11月が同▲1.1%となった。11月は耐久消費財(前月比▲1.0%)、非耐久消費財(同▲1.1%)ともに落ち込んだが、10、11月の平均を7-9月期と比較すると、耐久消費財が6.1%、非耐久消費財が0.8%、消費財全体では3.9%高い水準となっている。鉱工業指数の消費財出荷には輸出向けが含まれていることには注意が必要だが、10月までの鉱工業出荷内訳表を見ると国内向けの消費財出荷も高い伸びを示している。

昨日公表された家計調査の消費支出は非常に弱い結果であったが、消費財出荷、商業動態統計などの消費関連指標と合わせてみると、個人消費は持ち直しの動きを続けていると判断される。

2.10-12月期は増産ペースが加速する公算

製造工業生産予測指数は、16年12月が前月比2.0%、17年1月が同2.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(11月)、予測修正率(12月)はそれぞれ▲1.8%、0.8%であった。

予測指数を業種別にみると、12月は予測調査が実施されている11業種全てが前月比でプラスとなっている。一方、1月は全体の伸びは12月とほぼ同じだが、輸送機械が前月比▲6.9%となるなど11業種中6業種が減産計画となっており、業種毎のばらつきが大きくなっている。

輸送機械の減産計画の理由としては新型車投入効果の反動の可能性が考えられるが、在庫水準が大きく低下しているため、生産調整が長引くリスクは低いだろう。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
16年11月の生産指数を12月の予測指数で先延ばしすると、16年10-12月期は前期比2.5%の高い伸びとなる。生産計画は下方修正される傾向が続いているが、12月の生産の伸びが予測指数から▲3%下振れても10-12月期は前期比1.5%となる。過去6ヵ月の実現率が平均▲1.6%であることを踏まえると、10-12月期の生産の伸びは7-9月期(前期比1.3%)を上回る可能性が高い。輸出、国内需要の持ち直し、在庫調整の進展を受けて生産は回復基調が明確となってきた。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2016年12月28日「経済・金融フラッシュ」)

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