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ユニバーサル・デザイン(以下、UD)という言葉は、わが国でも広く定着してきたように思う。直訳すれば、「すべての人のためのデザイン」である。その意味するところは、年齢や性別、言語や文化、知識や経験、あるいは能力や障がいの有無・レベルにかかわらず、最初から製品や建物・施設、情報、サービスなどをできるだけ多くの人々が使いやすいように設計することである。
このUDは、自身が障がい者であった米国の建築家ロナルド・メイスが1980年代に提唱したもので、7つの原則がある。つまり、誰にも使える、使い勝手がよい、使い方が簡単、分かりやすい説明、うっかりミスに対応、力がいらない、アクセスの良さと使用時の広さ。UDは、まずモノに採用されるようになった。例えば、テレホンカードの切れ込み、めくりやすいノート、シャンプー容器のギザギザ、温水便座器、多機能トイレ、使いやすい自動販売機、ノンステップバスなどがある。
しかし、UDはモノだけに限定されない。例えば、非常口を示す絵文字(ピクトグラム)の表示は情報のUDと言えるが、コミュニケーションにも適用できるようだ。先日、一般社団法人ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会(略称:UCDA)の方にお話を聞く機会があった。その活動は、企業や団体が生活者へ提供する情報媒体の“見やすさ・分かりやすさ・伝わりやすさ”を支援することである。特に「UCDA AWARD」による表彰や「UCDA認証」によって、その啓発・普及に努めている。最近では金融機関や地方自治体において、その発行する書類の紙面改善が増えているとのことである。
そして、UDにはモノや情報・コミョニケーションを超えた『心のユニバーサル・デザイン』があるという。これをウェブで検索してみると、実に多くの事例が掲載されていた。公共交通機関では旅客サービスの向上ないしCSRの一環として行われている。多くの県や市町村でも、この言葉が使われていて、誰もが住みやすい街づくりをめざしている。共通することは、少子高齢化や顧客の多様化を背景に、サービスを提供する者の他者への“おもいやりの心”を醸成することのように感じた。
他者のことを慮ることは大切である。しかし、これまでの均質社会を前提として“異質”を受け入れようという発想ならば、限界があろう。これから必要なことは、多様性に対応できる社会の仕組みのUD化である。企業なら、多様性に満ちたグローバル社会に適応できるガバナンス態勢が必要である。このことが、ひいては偏見や差別、過度の格差のない持続可能な社会につながるように思う。
(2015年08月18日「研究員の眼」)
川村 雅彦
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