2015年08月07日

次世代法の認定制度見直しに企業はどう対応するか-女性活躍推進法案も視野に

基礎研REPORT(冊子版) 2015年8月号

生活研究部 主任研究員   松浦 民恵

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1―次世代法の認定制度見直しと、女性活躍推進法創設に向けた動き

「次世代育成支援対策推進法」(次世代法)により企業に策定・届出が求められている「一般事業主行動計画」(行動計画)の目標を達成し、認定基準を満たした企業は、申請により「子育てサポート企業」としての認定(くるみん認定)を受け、次世代認定マーク(くるみん)を付与されてきた。この次世代法が2014年4月に改正され、法律の有効期限が10年間延長された(2025年3月末まで)。あわせて、次世代法のくるみん認定基準が一部見直されるとともに、より厳しい基準による特例認定制度として、プラチナくるみん認定制度が新設されることとなった(2015年4月施行)。
   [図表1]は、改正前後のくるみん認定基準とプラチナくるみん認定基準を比較したものである(プラチナくるみんマークの色は、認定を受けた企業が12色のパターンから選択できる)。
   企業がプラチナくるみんを取得できた場合には、次世代法の行動計画の策定・届出が免除され、そのかわりに次世代育成支援対策の実施状況を、毎年少なくとも1回、公表することが求められるようになる。次世代法の認定制度見直しを受けた企業の対応を考えるうえでは、2015年7月1日現在、国会で審議中である「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」案(女性活躍推進法案)の動向も視野に入れる必要がある。
   なぜかといえば、企業が女性の活躍を実効的に推進するためには、次世代法で求められている仕事と育児の両立支援の取組が不可欠であり、女性活躍推進と両立支援は一体的に検討されるべきものだからである。また、女性活躍推進法案は、集中的・計画的取組のための時限立法であること、認定制度が盛り込まれていること等、次世代法と法律の枠組みも類似している。



 

2―企業の今後の対応に向けて

企業にとって、次世代法や女性活躍推進法案の認定を取得するのが「第一義的な」目的ではないことは言うまでもないが、これらの行動計画の策定は一定規模以上の企業にとって義務であることから、認定を視野に入れることは十分一考に値する。また、外部から認定されることが、社内における両立支援の取組や女性活躍推進の後押しになることもあろう。
   その場合、いかに戦略的・効率的に双方の行動計画を策定し、認定の取得を目指すか。どちらの行動計画も、提出先は次世代法と同様、厚生労働省の都道府県労働局雇用均等室になるであろうが、様式や方法がどの程度統一されるか等、具体的な運営は女性活躍推進法案が成立した後に検討されることになろう。法案が成立した場合、企業は、厚生労働省令等でこれらの点を確認し、次世代法の行動計画届出や認定申請と共用できるものは可能な限り共用し、効率的な事務プロセスを構築する必要がある。そのためにも、企業の取組のスケジュールと、双方の行動計画の期間とを、なるべく合わせることが望ましいだろう。また、行動計画策定の際には、計画の内容が認定基準に合致することを、雇用均等室に念のため確認しておくことをお勧めする。
   最後に、次世代法の認定に関する企業の現状や目標別に、今後の対応に向けた検討ポイントを整理しておきたい。
   「くるみんを取得していない企業」にとっては、くるみんの取得に向けて、男性の育児休業取得率にかかる認定基準が特に高いハードルになると考えられるが、認定制度がスタートした当初に比べれば、男性の育児休業取得環境は相当改善してきた。これまで両立支援に熱心に取り組んでこなかった企業も、認定を最初から無理だと諦めずに、認定基準と自社の状況を今一度照らし合わせ、検討してみる余地はある。
   「くるみんは取得しているが、プラチナくるみんの取得は難しい企業」にとっては、プラチナくるみん認定基準のなかで、基準5(男性の育児休業取得)や基準8(働き方の見直し)が特に高いハードルになるが、これらは、仕事と育児の両立支援等を通じて子どもを生み育てられる環境を整備するうえでも、女性活躍推進を進めるうえでも避けて通れない重要な課題であり、現状を着実に改善していく必要がある。ただ、この基準に到達する水準までの改善がにわかに難しい場合は、当面、くるみん認定の実績を積み重ねていくことが現実的な選択肢となろう。改正後のくるみんマークは、認定の回数が☆の数で明示されるようになった。継続的かつ何度もくるみんを取得していることを示すことができれば、求職者や投資家等に対しても、一定のアピール効果が期待できよう。
   「くるみんを取得しており、プラチナくるみんを目指す企業」にとって、プラチナくるみんの取得を目指す価値は十分にある。新設されたばかりの認定制度であることから、プラチナくるみんを取得している企業はまだ非常に少なく、マスコミ等の注目度も高い。
   また、前述のとおり、プラチナくるみんを取得すれば、次世代法にかかる行動計画の策定・届出が免除されるという特典もついている(ただし、女性活躍推進法案が成立すれば、この法律で求められている一般事業主行動計画の策定・届出は必要)。
   プラチナくるみんは、法改正をまたぐ行動計画でも、過去にくるみん認定の実績があれば申請できる。法改正前に行動計画を策定したために、一部プラチナくるみんの認定基準に合致しない内容があるとすれば、計画期間の途中で内容を修正することも考えられる。ただ、基準8(働き方の見直し)で設定および達成が求められている「定量的な目標」については、遅くとも計画期間終了日の1年前まで(2016年3月31日までに計画期間の終了日が到来する場合には、特例的に遅くとも計画期間終了日の3ヶ月前まで)に定めておく必要がある。なお、プラチナくるみんは永久に有効というわけではなく、認定基準に合致しなくなった場合には取り消されることになる。プラチナくるみんの申請にあたっては、コンスタントにプラチナくるみん認定基準をクリアできるだけの体制整備ができているかどうかを、慎重に考慮する必要があるだろう。
   今後、企業が次世代法や女性活躍推進法案の認定について検討するうえで、本稿が参考になれば幸いである。

 
 

 
  1 本稿での考察においては、中央大学大学院戦略経営研究科ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト(代表:佐藤博樹中央大学教授)での活動・議論が大いに参考になった。ここに記してお礼申し上げる。なお、本稿における主張は筆者の個人的見解であり、本稿に誤りがあればその責はすべて筆者に帰する。
  2 育児・介護休業法の改正(2009年7月公布)では、「父親も子育てができる働き方の実現」(2010年6月施行)として、専業主婦の夫も育児休業を取得できるようになったほか、父母ともに育児休業を取得する場合は休業可能期間が延長される等、男性の育児休業取得を後押しする内容が盛り込まれた。また、2014年4月より、原則として1歳までの子の育児休業期間中に雇用保険から給付される、育児休業給付金の給付割合が引き上げられた(休業開始から6ヶ月間の給付について、給付割合が休業開始前賃金の50%から67%に)。さらに、男性の育児休業取得については、従業員300人以下の企業に対する特例が設けられている。
  3 プラチナくるみん認定に必要な法を上回る制度を廃止等したケース、公表された育児休業取得率等がプラチナくるみん認定基準で定める目標を達成できない状況が継続しているケース(公表以後1年以上経過した後の公表についても、当該状況が継続していると認められる場合)等が、プラチナくるみん認定の取り消し事由とされている(平成27年3月31日雇児発0331第33号)。

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生活研究部   主任研究員

松浦 民恵 (まつうら たみえ)

研究・専門分野
雇用・就労・勤労者生活、少子高齢社会

(2015年08月07日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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