コラム
2014年04月14日

「CSRとCSVに関する原則」

  川村 雅彦

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本年3月、『CSRとCSVに関する原則』が公表された。この原則は、筆者が個人として参加する有志の研究会「CSRとCSVを考える会」の起草を基にしたもので、所属を超えた発起人20名の連名による提言である。CSRは、言うまでもなく、Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)である。CSVは一般的ではないが、Creating Shared Value(共有価値の創造)の頭文字である。

このCSVは競争戦略論の第一人者である米国ハーバード大学のポーター教授が、CSRに取って代わるべきものとして2011年に提唱した概念で、経済価値と社会価値を同時に実現するものである。これは企業の競争力強化と社会的課題の解決を同時に実現させようとするビジネス戦略を意味し、具体的には社会的課題の解決に資する製品・サービスあるいは事業を開発することである。

それでは、なぜポーター教授はCSRに異議を唱えたのであろうか。フィランソロピーなどの慈善的な社会貢献活動では、大きな価値創造や社会変革を起こすことはできないと主張し、「CSRからCSVへの脱却」を訴えたのである。ただ、既にお気づきのことと思うが、ポーター教授の言うCSRとは米国流フィランソロピーのことである。

しかし、日本では「CSRからCSVへ」というかけ声のもと、それが文字どおりに受け取られて、「CSRはもう古い。これからはCSVだ」という声も聞かれる。「本来のCSR」が根付く前に、ビジネス上の競争戦略であるCSVだけが浸透していくことに対する懸念がある。発起人の問題意識はここにある。CSV自体というよりも、むしろ日本でのCSVの受け取り方を憂慮する有志が集まり、2013年夏から議論を積み重ねてきた。その成果として、ISO26000(CSRの国際規格)や国連「ビジネスと人権に関する指導原理」を踏まえて、一定の基準としてまとめたものが『CSRとCSVに関する原則』である。

国内の社会的課題はもとより、グローバル化のなかで新興国や途上国における人権・労働問題あるいは汚染問題などが顕在化しており、現在なお、社会の不安定要因は減っていない。CSVだけで将来に向けて本当に持続可能な地球社会・地域社会を実現することができるのであろうか。筆者は、CSRとCSVの同時実践が必要と考える。いかがであろうか。以下に『原則』を掲載する。

なお、2010年に発行されたISO26000は、CSRを「企業が自らの事業活動により環境や社会に及ぼす影響への責任」と定義した。世界の様々なイニシアチブも、この定義に収斂しつつある。

「CSRとCSVに関する原則」
   (注)原則の詳細 http://www.csonj.org/images/csr-csv.pdf
   (参考)拙稿「CSVはCSRの進化形だろうか?」ニッセイ基礎研レポート2013年4月

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(2014年04月14日「研究員の眼」)

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