2013年02月28日

働く人による介護の実態 -男性介護者に注目して

生活研究部 主任研究員   松浦 民恵

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■見出し

1――働く人、特に男性による介護に注目する理由
2――男女別にみた、介護への関わり方や負担感、仕事と介護の両立への苦悩
3――仕事と介護の両立支援に向けて~分析結果から得られた示唆

■introduction

65歳以上の要介護・要支援の認定者数は2010年度には491万人まで増加し(2001年度は288万人)、75歳以上に限ってみると、29.9%が要介護・要支援の状況にある(要介護は22.2%)。こうした要介護・要支援者のかげには、介護を担う介護者がいる(図表1)。


図表1:主な介護者の続柄と属性


主な介護者の内訳をみると、同居の家族等が64.1%、別居の家族等が9.8%、事業者が13.3%となっている。同居の家族等には女性が69.4%を占めるが、男性も30.6%と、2001年(23.6%)に比べると増加している。年齢は60~69歳が29.3%と最も高く、次に50~59歳(26.6%)、70~79歳(20.6%)が続いている。主な介護者の就業の状況をみると、40.1%が仕事を持っており、役員や一般常雇者も2割弱にのぼる。今後の見通しとして、(1)高齢化がさらに進行し2022年には団塊の世代が75歳に突入すること、(2)希望者全員の65歳までの雇用を企業に義務づける改正高年齢者雇用安定法が2013年4月に施行されること、等から、働く人が介護を担うケースはさらに増加していくと予想される。

一方で、家族の看護・介護を理由とする離職者数が徐々に増加している(図表2)。2006年から2007年にかけては14.5万人が看護・介護のために仕事を辞めた。離職によって、企業は働き盛りの貴重な人材を失ったことになる。離職者のほうも、就業による収入を失ったことで経済的基盤が脆弱化し、年齢的に再就職にも困難を伴ったことが推測される。離職者の大半は女性介護者だが、男性介護者の離職も少しずつ増加する傾向がみてとれる。


家族の看護・介護を理由とする離職者数の推移


男性介護者については、一般に看病や家事の経験が少ないこと、地域でのネットワーク構築が十分でないケースが多いこと等から、介護を抱え込み、苦悩する懸念が大きいといわれている。深刻なケースである要介護者に対する虐待について、虐待者の続柄をみると、男性(夫17.5%、息子40.7%)が6割強を占めているのも、気にかかるところである(図表3)。

そこで、本稿では、これまで十分に明らかにされてこなかった働く人による介護の実態、特に近年増加しつつある男性の介護の実態に光を当てる。具体的には、従業員を対象としたアンケート調査結果をもとに、働く人の介護の実態を、男女の比較を通じてみていきたい


虐待者の続柄




 
 厚生労働省「介護保険事業状況報告」より。
 社団法人全国国民健康保険診療施設協議会『平成22年度 老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業 男性介護者に対する支援のあり方に関する調査研究事業報告書』(2011年3月)では、男性介護者のパターン別の特徴が整理されている。
 東京大学社会科学研究所ワーク・ライフ・バランス推進・研究プロジェクト(http://wlb.iss.u-tokyo.ac.jp/)のメンバー、参加企業のかたがたには、本稿の執筆に向けて多くのご示唆を頂いた。特に同プロジェクト代表の東京大学佐藤博樹教授には、調査の設計段階から有益なアドバイスやご支援を頂いた。この場を借りてお礼申し上げたい。

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生活研究部   主任研究員

松浦 民恵 (まつうら たみえ)

研究・専門分野
雇用・就労・勤労者生活、少子高齢社会

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