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- 英国金融政策(11月MPC公表)-2会合連続の据え置きで利下げペースは鈍化
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2025年11月07日
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1.結果の概要:2会合連続となる政策金利の据え置きを決定
英中央銀行のイングランド銀行(BOE:Bank of England)は金融政策委員会(MPC:Monetary Policy Committee)を開催し、11月6日に金融政策の方針を公表した。概要は以下の通り。
【金融政策決定内容】
・政策金利(バンクレート)を4.00%で維持する(5対4、4名は3.75%への引き下げを主張)
【議事要旨等(趣旨)】
・成長率見通しは、25年1.4%、26年1.4%、27年1.7%、28年1.8%(10-12月期の前年比)
・インフレ見通しは、25年3.5%、26年2.5%、27年2.0%、28年2.1%(10-12月期の前年比)
・インフレ上振れリスクは足もとで低下、需要の弱さによる中期的な下方リスクがより顕在化したことで、全体として現在のリスクはより均衡している
・ディスインフレが続く場合は、政策金利は緩やかな低下経路を継続する可能性が高い
2.金融政策の評価:従来からペースを鈍化させる決定だが、利下げサイクルは継続見込み
イングランド銀行は今回のMPCで市場予想の通り1、政策金利を4.00%に維持した。前回9月までは四半期に1回のペースでの利下げが行われていたが、今回の会合で利下げを見送ったことで、利下げペースは鈍化したことになる。また、決定は5対4(4名は利下げを主張)であり、据え置き派と利下げ派がほぼ拮抗する結果となった。議事録では、金利据え置きに投票した5名のうち、比較的中立派であるベイリー総裁が、さらなる証拠を待つことに価値があると判断したことが決定を左右したと見られる(なお、政府の予算案が11月26日に公表される予定となっている)。
一方で、声明文では「ディスインフレが続く場合は、政策金利は緩やかな低下経路を継続する可能性が高い」として、利下げペースは鈍化したものの利下げサイクルが継続する可能性が高いことが明記された。また、今回、金融政策報告書で新たな見通しが示されたが、中央見通しでは成長率、インフレ率ともに9月の見通しから大きな変化はなかった。見通し通りにインフレ率が目標よりもやや高め、成長率が弱め(供給超過)という状況が当面継続する場合は、委員間でのインフレリスクに対する評価が分かれやすい状況は続きやすい。今後も、利下げサイクルは継続する可能性が高いが、利下げペースはより緩慢になることが想定される。
1 例えば、ブルームバーグの予想中央値。
一方で、声明文では「ディスインフレが続く場合は、政策金利は緩やかな低下経路を継続する可能性が高い」として、利下げペースは鈍化したものの利下げサイクルが継続する可能性が高いことが明記された。また、今回、金融政策報告書で新たな見通しが示されたが、中央見通しでは成長率、インフレ率ともに9月の見通しから大きな変化はなかった。見通し通りにインフレ率が目標よりもやや高め、成長率が弱め(供給超過)という状況が当面継続する場合は、委員間でのインフレリスクに対する評価が分かれやすい状況は続きやすい。今後も、利下げサイクルは継続する可能性が高いが、利下げペースはより緩慢になることが想定される。
1 例えば、ブルームバーグの予想中央値。
3.金融政策の方針
今回のMPCで発表された金融政策の概要は以下の通り。
1 政策金利の維持を主張したのは、ブリーデン委員(副総裁)、ディングラ委員、ラムスデン委員(副総裁)、テイラー委員。前回は据え置きが決定されるなかで、ディングラ委員、ラムスデン委員(副総裁)が利下げを主張した。
- (MPCは、金融政策を2%のインフレ目標として設定し、持続的な経済成長と雇用を支援する、MPCは中期的かつフォワードルッキングなアプローチを採用し、持続的なインフレ目標達成に必要な金融政策姿勢を決定するとの記載は削除)
- 11月5日に終了した会合で、委員会は多数決により政策金利(バンクレート)を4.00%に維持することを決定した(5対4で決定1)、4名は政策金利を3.75%に引き下げることを希望した
- CPIインフレ率はピークに達したと判断される
- 基調的なディスインフレの進展は、制限的な金融政策の支えもあり、継続している
- これは、賃金上昇率やサービスインフレの鈍化に反映されている
- 基調的なディスインフレは緩慢な成長率や労働市場の弛み(slack)の拡大によって支えられている
- 金融政策は2%のインフレ目標の安定的な達成をとりまくリスクのバランスをとるために設定される
- インフレ率の持続性が強まるリスクは足もと目立たなくなり、需要の弱さによる中期でのリスクがより顕在化しているため、全体として現在のリスクはより均衡している
- しかしながら、双方についてさらなる証拠が必要である
- 金融政策の制限度合いは、政策金利の引き下げにより低下した
- そのため、さらなる引き下げはインフレ見通しに依存する
- ディスインフレが続く場合は、政策金利は緩やかな低下経路を継続する可能性が高い
- (「金融政策に事前に設定された経路はなく、委員会は、引き続き集まる証拠に反応していく」との文言は削除)
1 政策金利の維持を主張したのは、ブリーデン委員(副総裁)、ディングラ委員、ラムスデン委員(副総裁)、テイラー委員。前回は据え置きが決定されるなかで、ディングラ委員、ラムスデン委員(副総裁)が利下げを主張した。
4.議事要旨の概要
記者会見の冒頭説明原稿や金融政策報告書および議事要旨の概要(上記金融政策の方針で触れられていない部分)において注目した内容(趣旨)は以下の通り。
(冒頭説明)
(委員会の議論)
(当面の政策決定)
- GDP成長率見通しは、25年1.4%、26年1.4%、27年1.7%、28年1.8%(10-12月期の前年比)
(9月時点では、25年1.5%、26年1.3%、27年1.6%)- CPI上昇率は、25年3.5%、26年2.5%、27年2.0%、28年2.1%(10-12月期の前年比)
(9月時点では、25年3.6%、26年2.5%、27年2.0%) - 失業率は、25年5.0%、26年5.0%、27年4.9%、28年4.7%(10-12月期)
(9月時点では、25年4.9%、26年4.9%、27年4.8%)
- CPI上昇率は、25年3.5%、26年2.5%、27年2.0%、28年2.1%(10-12月期の前年比)
(冒頭説明)
- 本日、我々はバーナンキレビューへの対応に関する進展を反映した、新しく改善されたコミュニケーションパッケージを公表する
- 我々の議事録では金融政策の概要は、より簡潔により焦点が絞られる一方で、金融政策委員会のそれぞれのメンバーの見解を示した独立の段落がある
- 金融政策報告書では、我々の決定の根拠となる主要な経済状況が示される一方で、一連のボックスで分析の主要な部分を提供している
- また、報告書では中央見通しに加えて、具体的な金融政策の対応策を示す詳細なシナリオが提供されている
- 本日の決定は2つの鍵となる判断に基づいている
- 1つめは、国内の物価と賃金の基調的な上昇圧力が緩和を続けていること
- 最近のデータは、インフレ率の持続性が強まるリスクは足もと目立たなくなり、需要の弱さによる中期でのリスクがより顕在化しているため、全体として現在のリスクはより均衡していることを示唆している
- 報告書の中央見通しに示されている通り、市場金利を反映すれば、政策金利は緩やかな低下経路を継続する可能性が高いことを意味する
- 2つめの鍵となる判断は、ディスインフレが続く場合は、政策金利は緩やかな低下経路を継続する可能性が高い
- 金融政策の制限度合いは政策金利の引き下げによって低下した
- そのため、さらなる引き下げはインフレ見通しに依存する
- 段階的なアプローチはインフレ率に関するリスクバランス、インフレの持続性から生じる上方リスクと弱い経済活動から生じる下方リスク、を証拠ともに評価することを可能にする
- 投票結果や、議事録におけるメンバーの新しい個別見解を示す段落からわかるように、この評価では双方の証拠が比較される
- 委員会のメンバーによりリスクバランスの結論は分かれている
- 一部のメンバーは他のメンバーよりも上方シナリオの可能性が高いと考えており、政策上の含意はそれに従っている
- 他のメンバーは下方シナリオに重点を置いており、政策上の含意もその見解に従っている
- 政策金利の引き下げが実施されるごとに、その判断は微妙なものとなっていくだろう
- 11月11日に中銀は購入債券を保有する資産購入枠組みの取引に関する次回の四半期評価を公表する
- 今後、中銀の政策は金融システムの流動性需要に適合させることを目指す
- 我々のアプローチは主にレポにより準備金を供給する需要主導の枠組みに移行する
(委員会の議論)
- 委員会は今後の主要なデータとともに、蓄積された証拠を評価していく
- 予算案は11月26日に公表される予定である
(当面の政策決定)
- 5名のメンバー(ベイリー、グリーン、ロンバルデリ、マン、ピル)が今回の会合で政策金利を4%に維持することを希望した
- このグループの4名のメンバー(グリーン、ロンバルデリ、マン、ピル)はインフレの持続リスクをより重視しており、より長い金融引き締めが必要であると要求していた
- 基調的なディスインフレは進展しているが、これらのメンバーはインフレ期待の高まりや構造変化によってインフレ率が持続するリスクを特に重視し、この進展が停滞する可能性を懸念した
- このグループの1名のメンバー(ベイリー)は、中期的なインフレに対する全体的なリスクは低下し、最近はより均衡していると判断した
- しかし、さらなる証拠を待つことに価値があるとした
- 4名のメンバー(ブリーデン、ディングラ、ラムスデン、テイラー)は今回の会合で政策金利を0.25%引き下げることを希望した
- ディスインフレ傾向はより定着しており、現在および将来の弛みが基調的なインフレ率を目標と整合的な水準に回帰させるだろう
- これらのメンバーは下方リスクをより重視し、現在の傾向が継続すること、特に家計の貯蓄率が引き続き高止まりして消費の重しになることを懸念している
- このグループのうち2名(ディングラ、テイラー)は現在の政策が過度に制限的であり、経済活動に不当な悪影響を与え、中期的なインフレ率を下振れさせる可能性があるとした
(2025年11月07日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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