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年金改革ウォッチ 2021年8月号~ポイント解説:2022年4月開始の年金簡易試算Web

保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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1 ―― 先月までの動き
○年金広報検討会
7月1日(第11回) 個々人の年金の「見える化」のための取組み
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212815_00025.html (資料)
○社会保障審議会 資金運用部会
7月30日(第17回) GPIFの令和2年度業務実績評価
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20198.html (資料)
2 ―― ポイント解説:2022年4月開始の年金簡易試算Web

「自分がもらえる年金額の見込み」は、年金について以前から多くの人が関心を持つ項目である。政府は、以前は社会保険事務所(現在の年金事務所)で照会した58歳以上の人にのみ見込額を提供していたが、2004年から対象者を拡大し、2009年からは「ねんきん定期便」、2011年からは「ねんきんネット」で全加入者へ提供してきた*1。
その後、英国における「年金ダッシュボード」(Pension Dashboard)の検討などが日本でも注目され*2、2019年12月に取りまとめられた社会保障審議会年金部会の報告書や同企業年金・個人年金部会の報告書に、公的年金や私的年金等について個々人の現在の状況と将来の見通しを全体として「見える化」する必要性が盛り込まれた。

*1 詳細は、拙稿「政府と加入者のコミュニケーションのあり方」および「個人宛通知による年金情報提供の強化」、ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会(2011.8.9)資料2、を参照。
*2 例えば、2019年10月に村井英樹衆議院議員が「人生100年時代 「公的年金」と「年金ダッシュボード」の可能性」と題して講演している。
*3 2021年6月18日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(本文,p.25)に盛り込まれている。

スマホ用アプリからWebアプリへと変更されたが、「ねんきん定期便」に印刷されたQRコードを読み込んで試算に必要な情報を得る点と、試算結果をCSVファイルで出力して民間アプリと連携する点は維持されている。
今回の検討会では、画面設計についてかなり多くの意見が委員から出た。例えば、画面上部に常に表示される試算結果の部分については、円グラフでは年金額の増減を感じにくい、受給期間も分かる表示にすべき、老齢年金だけでなく遺族年金や障害年金も示すべき、といった意見が出た。また、スクロール表示される試算前提の部分については、給与などをスライドバー形式で設定可能にすべき、給与と賞与を統合すべき、などの意見が出た。
年金見込額の試算は既に「ねんきんネット」でも可能であり、「年金簡易試算Web」の設計においては「ねんきんネット」との役割分担が重要だと筆者は考える。
「ねんきんネット」と比べた「年金簡易試算Web」の最大の魅力は、事前のユーザー登録が不要な点だろう。利用開始時の負担が減ることで、「ねんきんネット」よりも多くの利用者が見込める。この観点からは、検討会で要望があった、「ねんきん定期便」に印刷されたQRコードを読み込むと「年金簡易試算Web」を開けるようにする仕組みも、積極的に検討すべきだろう。また、ユーザー登録の負担が減るとはいえ、わざわざ同Webを開くような能動的な利用者の期待に応えるための工夫も、必要であろう*4。
*4 この試算の利用は、「ねんきんネット」の利用登録はためらうが試算は行いたい場合やファイナンシャル・プランナーや金融機関へ「ねんきん定期便」を持参して相談する場合などが想定される。検討会では転職などの入力を簡素化すべきという意見も出たが、能動的な利用者を満足させるにはある程度の設定は可能とすべきだろう。また、試算条件を変更出来るだけでなく、「加入期間が増えれば年金額が増える」などの簡単な説明が表示されれば、利用者の納得感や満足感が高まると思われる。
(2021年08月03日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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