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中国経済:景気指標の総点検(2019年冬季号)~19年10-12月期の成長率は6.1%に改善へ!

三尾 幸吉郎
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1.中国経済の概況
17年10月に5年に1回の党大会(19大)を終えた中国では、18年に入って過剰債務を圧縮すべくデレバレッジを推進したためインフラ投資が急減速した。また、18年夏に激化した「米中対立」は、中国経済の将来を担う「中国製造2025」関連産業の先行きに不透明感をもたらし製造業の投資を鈍らせるとともに、中国株が大きく下落して消費者マインドを冷やし、自動車販売は前年割れに落ち込んだ。さらに、「産業のコメ」と言われる集積回路(IC)にも影響を及ぼし、データセンター建設ラッシュが沈静化し、次世代通信規格(5G)への移行期に差し掛かったスマホの買い控えも重なって、6%台後半で推移していた成長率は18年末には6%台前半まで減速した。そこで中国政府は18年12月、「反循環調節(景気減速の押し戻し政策)」と呼ばれる景気対策に舵を切り、「地方債券の発行規模を大幅に増やす」とともに、金融政策を「穏健中立」から「穏健」に切り替えて、金融(預金や融資)の伸びをGDP名目成長率につり合う伸びに設定、デレバレッジの推進は事実上の棚上げとなった。これを受けて、社会融資総量(企業や個人の資金調達総額)は18年12月をボトムとして緩やかに伸びを高め、成長率は6.4%前後で下げ止まることとなった。
しかし、デレバレッジは事実上の棚上げとなったものの、「米中対立」は沈静化しなかったため景気は再び減速し始めた。そこで中国政府は8月27日、「流通の発展を加速し消費を促進することに関する意見」を発表し消費拡大策(自動車購入規制の段階的緩和や深夜営業など20項目)を打ち出し、9月4日には地方政府特別債券の発行とその使用を加速する措置を発表した。また、8月には新たに導入したローンプライムレート(LPR)を貸出基準金利よりも低めに設定し、9月と11月にはそれをさらに引き下げて金利低下を促すとともに、9月16日には預金準備率を引き下げて銀行の貸出余力を増やすなど、中国政府(含む中国人民銀行)は景気の下支えに動いている。
一方、消費者物価は11月に前年比4.5%上昇と抑制目標である「3%前後」を上回った。アフリカ豚コレラの蔓延で豚肉が2倍超に高騰し食品を押し上げた。但し、工業生産者出荷価格は下落し、食品・エネルギーを除くコアは同1.4%上昇に留まるなど、それ以外は概ね安定している(図表-2)。
2.景気10指標の点検
1 中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
個人消費の代表指標である小売売上高の動きを確認すると、10-11月期は前年比7.1%増(推定)と7-9月期の同7.8%増(推定)を0.7ポイント下回った(図表-7)。業種別に内訳が公表される一定規模以上の小売統計を見ると、日用品は前年比15.2%増(推定)、化粧品も同12.3%増(推定)と高い伸びを維持したものの、住宅販売の低迷を背景に家具が同3.7%増(推定)、家電が同5.9%増(推定)と足枷となり、自動車は前年割れとなった。なお、1-11月期の電子商取引(商品とサービス)は前年比16.6増と勢いはやや鈍ってきたものの、BAT(百度、阿里巴巴、騰訊)などプラットフォーム企業が新たな消費を生み出す流れを背景に、全体を上回る伸びを維持している。
投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)の動きを確認すると、10-11月期は前年比4.3%増(推定)と前四半期の同4.6%増(推定)を0.3ポイント下回った(図表-8)。投資の内訳を見ると、不動産開発投資は前年比8.9%増(推定)と高水準ながらもやや伸びが鈍化し、インフラ投資も同1.8%増(推定)と前四半期の同5.3%増(推定)を下回った。一方、製造業の投資は前年比2.5%増(推定)と引き続き低い伸びに留まったものの、持ち直しの兆しがある。特にコンピュータ・通信・電子設備製造は、中国政府による次世代通信規格(5G)投資推進を背景に、1-3月期の前年比5.5%増をボトムに10-11月期には同23.6%増(推定)へV字回復している(図表-8)。なお、消費のサービス化を受け、教育や文化体育娯楽への投資も高い伸びを示した(図表-9)。
もうひとつの経済の柱である輸出(ドルベース)の動きを確認すると(図表-10)、10-11月期は前年比1.0%減と小幅な前年割れが続いている。また、先行指標となる新規輸出受注は18ヵ月連続で50%を割り込んでおり、引き続き楽観できない状況となっている。
以上を総括すると、これまで減速傾向にあった中国経済は、10月に総合評価点が中間点(5点)を回復し、11月には中間点を超える6点となり、減速には歯止めが掛かったと判断できるものの、景気回復の持続性に関しては未だ不透明な状況にあると考えられる。
3.19年10-12月期の成長率は6.1%に改善へ!
その「景気インデックス」のこれまでの推移をみると(図表-14)、中国経済は18年下半期以降、債務圧縮(デレバレッジ)と米中対立激化という2つのマイナス要因を背景に減速し始めたが、18年末に中国政府がデレバレッジを事実上棚上げしたため、19年3月には一時6.57%まで回復することとなった。しかし、その後も激しい米中対立が続いたことから、7-8月の「景気インデックス」は5%台に突入することとなったが、9月には中国政府が次世代通信規格(5G)投資を促進し始めたことを背景に、ハイテク製造業の生産がV字回復したため6%台を回復することとなった。
なお、2020年1月17日(金)に、中国国家統計局は19年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表する予定である。足元の「景気インデックス」は、10月が6.07%、11月が6.20%と、19年7-9月期の前年比6.0%増を上回っている。12月の景気指標が余程の悪化とならない限り、今回発表される19年10-12月期の成長率は前四半期を上回る可能性が高いと言えるだろう。ちなみに、筆者は12月の景気指標が11月よりも若干悪化すると見ているため、前年比6.1%増を予想している。
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(2019年12月27日「Weekly エコノミスト・レター」)
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