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- 消費者のキャッシュレス利用動向-消費増税時のキャッシュレス・ポイント還元前の現在の状況は?
消費者のキャッシュレス利用動向-消費増税時のキャッシュレス・ポイント還元前の現在の状況は?
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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- 二人以上世帯の日常的な決済手段では、現金の利用が減り、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済が増えている。公共料金等の定期的な決済手段では口座振替が圧倒的に多いものの減っており、クレジットカードが現金を上回って増えている。最近ではスマホ決済が可能となる地域もあり、今後に期待が寄せられる。
- 現在の日常的な決済手段では、少額であるほど現金や電子マネーが、高額であるほどクレジットカードが使われている。利便性や電子マネーの上限額設定、店舗等のキャッシュレス対応状況から、千円以下の支払いではクレジットカードより電子マネー、1万円以上では現金よりクレジットカードが使われているようだ。
- 年齢別に見ると、現金の利用は年齢とともに増え、70歳以上では5万円を越える支払いでも半数以上は現金を利用する。高額な支払いでは、クレジットカード保有率が低く、可処分所得の少ない20歳代でも現金利用が目立つ。
- クレジットカードの利用は20歳代を除けば若いほど、電子マネーは30~40歳代を中心に利用されている。クレジットカードと電子マネーの使い分け金額は年齢によらず千円だが、現金とクレジットカードの使い分け金額は60歳代では5万円、70歳以上では5万円を越えても現金の利用が多い。
- 世帯年収別には、無収入の層を除けば現金は低年収ほど、クレジットカードは高年収ほど、電子マネーは世帯年収500万円以上を中心に利用が多い。なお、特に現金と電子マネーの利用は、世帯年収による決済手段の違いは世帯主の年齢の影響も大きい。
- 都市規模や地域別に見ると、大都市や関東でキャッシュレス化が進んでいる。背景には、居住者の年齢や機器の保有率、店舗等におけるクレジットカード対応状況の違いがあげられる。一方で地方部でも訪日外国人観光客の多い観光地ではキャッシュレス決済の対応が早い場所もあり、各地の状況をより丁寧に見る必要がある。
- 10月の消費増税時には「キャッシュレス・消費者還元事業」が予定されているが、キャッシュレス決済利用の現状を見ると、対応機器を保有しているかどうか、対応する店舗等の多い地域に住んでいるかどうかなどによって、消費者が受ける恩恵に差が生じる懸念がある。「必要がない」「やり方か分からない」というシニア層を中心に、消費者に対して、より丁寧な啓蒙活動を行う必要がある。
■目次
1――はじめに~多様化する決済手段、消費者のキャッシュレス決済利用の現状は?
2――消費者の決済手段の変化~現金や口座振替からキャッシュレス決済へ
2|定期的な決済手段の変化~口座振替が主流だが減少傾向、増えるクレカ、今後
スマホ決済にも期待
3――消費者の決済手段の属性による違い
~30~40歳代、高年収層、都市部で進むキャッシュレス
1|現在の日常的な決済手段~電子マネー・スマホ決済とクレカは千円、現金と
クレカは1万円で使い分け
2|年齢別に見た日常的な決済手段~20歳代は高額で現金志向も、30~40歳代で進む
キャッシュレス
3|世帯年収別に見た日常的な決済手段~高年収世帯と年収500万円前後の世帯で進む
キャッシュレス
4|都市規模別・地域別に見た日常的な決済手段~大都市で進むキャッシュレス、
店舗対応の地域差も
4――おわりに
~消費増税時のキャッシュレス・ポイント還元事業に向けて、より丁寧な啓蒙活動を
(2019年08月26日「基礎研レポート」)
03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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