2019年06月19日

貿易統計19年5月-基調の弱さに10連休を控えた前倒しの反動が加わり、輸出の減少幅が拡大

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.輸出の減少幅が拡大

財務省が6月19日に公表した貿易統計によると、19年5月の貿易収支は▲9,671億円の赤字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:▲10,789億円、当社予想は▲9,662億円)は若干上回る結果となった。輸入は前年比▲1.5%(4月:同6.5%)と減少に転じたが、輸出が前年比▲7.8%(4月:同▲2.4%)と減少幅が拡大したため、貿易収支は前年に比べ▲3,897億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲9.0%(4月:同▲4.3%)、輸出価格が前年比1.4%(4月:同2.0%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲1.2%(4月:同4.1%)、輸入価格が前年比▲0.3%(4月:同2.3%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲6,091億円と11ヵ月連続の赤字となり、4月の▲1,702億円から赤字幅が大きく拡大した。輸出が前月比▲5.3%の大幅減少となる一方、原油高の影響などから輸入が前月比1.3%の増加となった。なお、前月時点で黒字だった2月の貿易収支(季節調整値)が季節調整のかけ直しによって赤字となったため、18年7月から1年近くにわたって貿易赤字が続いている形となった。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 5月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=73.0ドル(当研究所による試算値)となり、4月の68.8ドルから上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は60ドル程度まで下落しているため、通関ベースの原油価格は6月は70ドル台で高止まりするが、7月には60ドル台半ばまで下落することが見込まれる。このため、原油高による輸入金額の増加は一段落するが、先行きも輸出の低迷が続くことが予想されるため、貿易収支(季節調整値)は赤字が継続する可能性が高い。

2.4-6月期の外需寄与度(GDP統計)は明確なマイナスへ

19年5月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲1.0%(4月:同5.1%)、EU向けが前年比▲8.0%(4月:同▲3.0%)、アジア向けが前年比▲12.2%(4月:同▲3.5%)となった。

季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比▲1.2%(4月:同4.2%)、EU向けが前月比▲7.5%(4月:同▲0.7%)、アジア向けが前月比▲5.4%(4月:同2.1%)、全体では前月比▲5.0%(4月:同0.3%)となった。

19年4、5月の平均を1-3月期と比較すると、米国向けは1.7%高いが、EU向けが▲5.7%、アジア向けが▲0.2%、全体では▲1.9%低くなっている。

5月の輸出の大幅な落ち込みは、4月が10連休を控えた前倒しによって押し上げられた反動による影響もあるが、4、5月を均してみても輸出が基調として弱い動きが続いているとの評価は変わらない。また、輸出減少の主因となっているIT関連の落ち込みにも歯止めがかかっていない。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/IT関連輸出の推移
一方、5月の輸入数量指数は前月比1.2%(4月:同0.3%)となり、4、5月の平均は1-3月期を1.2%上回っている。19年1-3月期のGDP統計では、輸入の減少幅(前期比▲4.6%)が輸出の減少幅(前期比▲2.4%)を上回ることにより、外需寄与度が前期比0.4%(前期比年率1.6%)と成長率を大きく押し上げた。4-6月期は輸出が減少する一方、前期の高い伸びの反動もあり輸入が増加に転じることから、外需寄与度ははっきりとしたマイナスとなることが予想される。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年06月19日「経済・金融フラッシュ」)

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