2018年12月21日

消費者物価(全国18年11月)-コアCPI上昇率は3ヵ月ぶりの1%割れ、先行きはさらに鈍化へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は3ヵ月ぶりの1%割れ

消費者物価指数の推移 総務省が12月21日に公表した消費者物価指数によると、18年11月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.9%(10月:同1.0%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:1.0%、当社予想も1.0%)を下回る結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.3%(10月:同0.4%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。生鮮食品が10月の前年比10.8%の高い伸びから同▲1.4%と下落に転じたことから、総合は前年比0.8%(10月:同1.4%)と4ヵ月ぶりの1%割れとなった。生鮮食品だけで総合指数の上昇率は前月から▲0.5ポイント縮小した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 コアCPIの内訳をみると、電気代(10月:前年比4.5%→11月:同5.6%)、ガス代(10月:前年比3.2%→11月:同4.0%)の上昇幅は拡大したが、ガソリン(10月:前年比17.8%→11月:同12.8%)、灯油(10月:前年比25.8%→11月:同21.9%)の上昇幅が大きく縮小したため、エネルギー価格の上昇率は10月の前年比8.9%から同8.1%へと縮小した。

また、テレビなどの教養娯楽用耐久財の下落幅拡大(10月:前年比▲0.3%→11月:同▲1.0%)から、教養娯楽の上昇幅が縮小(10月:前年比1.4%→11月:同1.0%)したこともコアCPIを押し下げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.64%(10月:0.69%)、食料(生鮮食品を除く)が0.18%(10月:0.21%)、その他が0.07%(10月:0.10%)であった。

2.上昇品目数は3ヵ月連続で増加

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、10月の上昇品目数は276品目(10月は268品目)、下落品目数は178品目(10月は183品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は52.8%(10月は51.2%)、下落品目数の割合は34.0%(10月は35.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は18.7%(10月は16.3%)であった。

上昇品目数の割合は18年8月に50%を割り込んだ後、9月以降は再び50%を上回っている。しかし、17年までに比べるとその水準は低く、物価上昇に裾野の広がりは見られない。

3.コアCPI上昇率はさらに鈍化へ

コアCPI上昇率はエネルギー価格の上昇幅縮小などから3ヵ月ぶりに1%を割り込んだ。原油価格(ドバイ)は10月上旬の1バレル=80ドル台をピークに50ドル台半ばまで急低下している。市場価格が遅れて反映される電気代、ガス代は19年初まで上昇率が高まることが見込まれるが、ガソリン、灯油価格はすでに大幅に下落している。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 エネルギー価格の前年比上昇率は10月の前年比8.9%をピークに18年度末には同5%程度、19年度入り後には同2~3%程度まで縮小することが予想される。コアCPI上昇率に対する寄与度では足もとの0.6%台から19年度入り後には0.2~0.3%程度まで縮小することになる。

また、サービス価格との連動性が高い賃金は伸び悩みが続いているが、18年入り後の景気減速や先行き不透明感の高まりなどから、19年の賃上げ率が前年を上回ることは期待できないだろう。基調的な物価上昇圧力が高まる材料は見当たらず、コアCPI上昇率はエネルギー価格の上昇率縮小を主因として鈍化傾向が続く可能性が高い。現時点では19年度中はゼロ%台の低空飛行が続くと予想している。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年12月21日「経済・金融フラッシュ」)

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