2018年11月30日

【10月米個人所得・消費支出】個人所得(前月比)は+0.5%、個人消費(同)は+0.6%と、いずれも市場予想を上回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:名目個人所得、消費ともに市場予想を上回る

11月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は10月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.5%(前月値:+0.2%)となり、前月および市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を上回った。個人消費支出(名目値)は前月比+0.6%(前月改定値:+0.2%)と、こちらは+0.4%から下方修正された前月、市場予想(+0.4%)を上回った(図表1)。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出も前月比+0.4%(前月改定値:+0.1%)と、こちらも+0.3%から下方修正された前月、市場予想(+0.2%)を上回った(図表5)。貯蓄率1は6.2%(前月:6.3%)と前月から▲0.1%ポイントの低下となった。

価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:+0.1%)と前月を上回った一方、市場予想(+0.2%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、+0.1%(前月値:+0.2%)と、こちらは前月および市場予想(+0.2%)を下回った(図表6)。前年同月比では、総合指数が+2.0%(前月値:+2.0%)と、前月から横這いとなった一方、市場予想(+2.1%)は下回った。コア指数は+1.8%(前月改定値:+1.9%)とこちらは+2.0%から下方修正された前月、市場予想(+1.9%)を下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:所得、消費ともに堅調な伸びを維持しており、年末商戦に向けて好材料

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 名目個人所得(前月比)は、18年1月以来の高い伸びとなり、所得環境が改善していることを示した(図表1)。

また、個人消費も18年の春先にみられた堅調な伸びに戻っており、消費のモメンタムは再び強まっている。

この結果、貯蓄率は17年12月以来の水準に低下しており、所得対比で消費の伸びが高くなっていることを示している。

足元で株式市場が不安定になっているほか、米中貿易戦争に伴う中国製品に対する追加関税賦課などのネガティブな材料はあるものの、雇用不安の後退が持続する中、消費者センチメントは堅調な水準を維持しているため、本格化している年末商戦でも、消費は堅調を維持することが見込まれる。

一方、物価は総合指数(前年同月比)がFRBの物価目標である2%に一致したものの、物価の基調を示すコア指数では8月と9月が下方修正された結果、3ヵ月連続で物価目標を下回る結果となっており、夏場から物価上昇圧力がやや後退したことを示した。

3.所得動向:自営業者所得が農業関連の政府補助金もあって大幅に増加

個人所得の内訳をみると賃金・給与が前月比+0.3%(前月:+0.3%)と、引き続き堅調な伸びを維持したほか、利息・配当収入も+0.4%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した(図表2)。また、10月は自営業者所得が+1.6%(前月:▲0.8%)と前月から大幅に伸びが加速した。これは農業関連の政府補助金によって農業関連自営業者の所得が前月から4割近い伸びとなったことが大きいようだ。また、政府による社会保障関連の補助金など移転所得も+0.6%(前月:+0.6%)と2ヵ月連続で高い伸びとなった。

一方、個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は+0.5%(前月値:+0.2%)と18年1月(同+1.0%)以来の伸びに加速した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベースでは+0.3%(前月:+0.1%)と、こちらも前月から伸びが加速した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:幅広い分野で消費は堅調

名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.5%(前月:+0.1%)となったほか、サービス消費も+0.7%(前月:+0.3%)となり、いずれも前月から伸びが加速した(図表4)。財消費では、耐久財が+0.5%(前月:▲0.1%)と増加に転じたほか、非耐久財が+0.6%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した。

耐久財では、娯楽財・スポーツカーが+0.5%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速したほか、自動車・自動車部品が+0.7%(前月:▲0.6%)と前月から増加に転じた。
非耐久財では、衣料・靴が+0.5%(前月:+0.6%)と高い伸びを維持したほか、ガソリン・エネルギーが+1.9%(前月:▲1.0%)と前月から大幅な増加に転じた。

一方、サービス消費では、外食・宿泊が+0.3%(前月:▲0.8%)と前月から増加に転じたほか、金融サービス+1.0%(前月:+0.6%)や、住宅・公共料金+1.0%(前月:+0.2%)などで前月から伸びが大幅に加速した。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:前年同月比でエネルギー価格の伸びが加速も、食料品価格は鈍化

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+2.4%(前月:▲0.4%)と前月からプラスに転じた一方、食料品価格指数は▲0.2%(前月:横這い)と、こちらはマイナスに転じた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+9.4%(前月:+5.3%)と前月から伸びが加速した(図表7)。一方、食料品価格指数は+0.3%(前月:+0.5%)と16ヶ月連続のプラスとなったものの、前月から伸びは鈍化した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2018年11月30日「経済・金融フラッシュ」)

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