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アジア生命保険市場の概況・展望-中長期の市場動向のダイナミックな変化を踏まえて-

平賀 富一
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はじめに
次いで、2007年から2016年のスパンにおける、アジア生保市場における変化という視点で、(1)アジアの国・地域別の位置づけの変化、(2)アジアの先進生保市場である日本とNIES4(韓国・香港・台湾・シンガポール)の生保普及度の進展、(3)アジアの二大生保市場たる日本と中国の市場規模の推移について考察する。
本年(2017年)は、アジア経済に大きなダメージを与え、その後の各国の経済・社会構造の変化への一大転機となったアジア通貨・金融危機(1997年7月1日のタイ・バーツの為替レートの急落が発端)から20年の節目を迎える。そこで、本稿の最後のパートでは、同危機で特に大きなダメージを受けたASEAN(東南アジア諸国連合)の3ヶ国(マレーシア・タイ・インドネシア)について、生保市場の有力プレーヤー(企業)の顔ぶれやマーケットシェアについて、特に外資系企業のプレゼンスの拡大という観点から、同危機の前(1996年)と近年(2015年)の状況を比較・検討する。
以下の記述では、アジア生保市場として、NIES4の「先進アジア」: Advanced Asia)、とそれ以外の「新興アジア」(Emerging Asia)を必要に応じて区分して論じている。新興アジアには、ASEAN(特に、マレーシア・タイ・インド ネシア・フィリピン・ベトナムを「ASEAN5」と総称)と中国、インド、その他のアジア諸国が含まれる(また、NIES4、ASEAN5と中国・インドの合計を「アジア11計」と表記している)。
先進アジア市場の一角である香港は、中国本土からの訪問者による生保加入(新規契約保険料の1/3以上を占める)が市場拡大の大きな要因となった。
新興アジア市場では、中国で、料率の自由化による無配当の貯蓄型の保険を中心とする販売増および保険監督の当局(保険監督管理委員会)による長期貯蓄性保険や保障性保険の販売強化方針の影響等により大幅な販売増となった。その他、インドネシア・ベトナムでは保険意識の向上とバンカシュアランス(銀行チャネルでの保険販売)での販売好調が高伸長の要因として指摘されている。また、インドでは、不動産や金等への投資に代えて金融商品への投資が増える中で、即時年金の人気が高まったことが生保市場の伸びに大きく寄与した。フィリピンのみが対前年減少しているが、これは2015年に主に一時払の投資型保険の販売増によって非常に高い伸び率を記録した反動とみられている。
スイス再保険(2017)およびミュンヘン再保険(2017)やAsia Insurance Review各号の記事を参考にして、足元1-2年の見通しと中長期の展望をみると以下のとおりである。
今後1-2年の見通しでは。先ず、先進アジア市場では、低金利環境により、金利面で魅力のある商品(特に投資型・貯蓄型商品)の提供が難しいと考えられ高成長は期待しにくいと見込まれている。さらに、香港では、中国による資本規制の強化により中国本土客による保険加入の動きが鈍化する可能性がある。次に、新興アジア市場では、インターネットによる販売やバンカシュアランスによる販売の増加、保障性商品の販売増といった要因により、多くの国で二桁の高い伸び率が予測(ミュンヘン再保険によれば、2017年・2018年で各年13%増)されている。ただし、中国では、当局による短期の資産運用商品の販売の抑制方針もあり2016年の高い増加率よりは鈍化するとみられている。
2017-2025年の中長期予測について、ミュンヘン再保険(2017)によれば、世界の生保市場全体で、年平均5%(実質ベースで3%)程度の伸び率が予測される中、図表-2のとおり、新興アジアが8.3%(実質ベース)と大きなけん引役となるとみられている。生活水準の向上と、保険カバーの増加ニーズがその大きな要因である。新興アジアの国別の伸び率は図表-3の予測値となっている。
2――2007年から2016 年のアジア生保市場における変化
(2017年07月18日「保険・年金フォーカス」)
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