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- 中国、年金積立金の株式運用が本格始動【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(25)
2017年04月18日
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中国において、年金積立金による株式運用など、リスク資産への投資が本格始動する。
主な目的は、少子高齢化が進む中で、年金積立金を市場で運用し、その収益を活用することで、将来世代の負担が大きくならないようにすることにある。また、もう一方で、機関投資家としてのプレゼンスを向上させ、将来的には市場における機関化の一端を担うことも期待されている。
2015年8月、国務院が年金積立金によるリスク資産への投資解禁の意向を発表し、2016年に、運営機関となる「全国社会保障基金」(全国社保基金)の理事会が、運用を受託する21の金融機関、資産管理を受託する4銀行を発表した。
全国社保基金は、この間、年金積立金を管理する各地方政府から運用資金を募った。当局である中国人力資源・社会保障部によると、2016年末時点で、7つの省などと合計3,600億元(約6兆円)の運用委託契約を結んでおり、本格始動への準備が整った。
主な目的は、少子高齢化が進む中で、年金積立金を市場で運用し、その収益を活用することで、将来世代の負担が大きくならないようにすることにある。また、もう一方で、機関投資家としてのプレゼンスを向上させ、将来的には市場における機関化の一端を担うことも期待されている。
2015年8月、国務院が年金積立金によるリスク資産への投資解禁の意向を発表し、2016年に、運営機関となる「全国社会保障基金」(全国社保基金)の理事会が、運用を受託する21の金融機関、資産管理を受託する4銀行を発表した。
全国社保基金は、この間、年金積立金を管理する各地方政府から運用資金を募った。当局である中国人力資源・社会保障部によると、2016年末時点で、7つの省などと合計3,600億元(約6兆円)の運用委託契約を結んでおり、本格始動への準備が整った。
1-全国社会保障基金が新たに21の運用受託機関・4銀行を選出
地方政府は、これまで、給付に充てられなかった年金積立金を銀行預金、国債の売買に限定し、自家運用してきた。このような手法は、積立金を安全に運用できる反面、利回りは低く、近年は物価上昇分をカバーできていない年もあった。
今後、委託運用の運営を担う全国社会保障基金(全国社保基金)は、日本の年金積立金運用独立行政法人(GPIF)とは異なり、年金積立金の運用を専門とする機関ではない。全国社保基金は、将来の年金積立金の赤字を補填する目的で2000年に創設された。管轄する赤字補填金の財源は年金保険料ではなく、国庫拠出金、国有企業の株式売却益、宝くじの収益となっている。運用は、当該基金の理事会が担い、運用先も国内外の株式、証券ファンドなどボラティリティの高い資産への投資や海外投資も行っており、2015年の収益率は15.2%と高い。加えて、年金積立金の運用に関する将来的な規制緩和を視野に、2012年以降、広東省や山東省などからも実験的に運用を受託し、高い利回りを確保している。政府は、このような取組みから、年金積立金の委託運用について新たに独立した機関を設けず、全国社保基金に決定したと考えられる。
ただし、年金積立金は国民の老後の生活を支える資金であり、その運用は前述の赤字補填金と全く同様というわけではないようである。運用、資産管理の受託機関は、長期的に安全かつ効率的に運用するという観点からも、原則として、これまで企業年金または赤字補填金の受託実績がある金融機関から選出している(図表1)。2015年に発表された投資・運用先などの範囲が企業年金のそれとほぼ同様であることから、運用受託機関には、企業年金の運用実績がある保険会社傘下の資産管理会社や、年金専門の保険会社が選ばれている。今後は、その運用状況に応じて、新たな金融機関の増加も考えられるが、現時点で、海外大手の運用機関を選出していない点や、投資についても海外投資を行わない点など、赤字補填金の運用手法とは一線を画している。
今後、委託運用の運営を担う全国社会保障基金(全国社保基金)は、日本の年金積立金運用独立行政法人(GPIF)とは異なり、年金積立金の運用を専門とする機関ではない。全国社保基金は、将来の年金積立金の赤字を補填する目的で2000年に創設された。管轄する赤字補填金の財源は年金保険料ではなく、国庫拠出金、国有企業の株式売却益、宝くじの収益となっている。運用は、当該基金の理事会が担い、運用先も国内外の株式、証券ファンドなどボラティリティの高い資産への投資や海外投資も行っており、2015年の収益率は15.2%と高い。加えて、年金積立金の運用に関する将来的な規制緩和を視野に、2012年以降、広東省や山東省などからも実験的に運用を受託し、高い利回りを確保している。政府は、このような取組みから、年金積立金の委託運用について新たに独立した機関を設けず、全国社保基金に決定したと考えられる。
ただし、年金積立金は国民の老後の生活を支える資金であり、その運用は前述の赤字補填金と全く同様というわけではないようである。運用、資産管理の受託機関は、長期的に安全かつ効率的に運用するという観点からも、原則として、これまで企業年金または赤字補填金の受託実績がある金融機関から選出している(図表1)。2015年に発表された投資・運用先などの範囲が企業年金のそれとほぼ同様であることから、運用受託機関には、企業年金の運用実績がある保険会社傘下の資産管理会社や、年金専門の保険会社が選ばれている。今後は、その運用状況に応じて、新たな金融機関の増加も考えられるが、現時点で、海外大手の運用機関を選出していない点や、投資についても海外投資を行わない点など、赤字補填金の運用手法とは一線を画している。
(2017年04月18日「保険・年金フォーカス」)
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
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