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海外資金による国内不動産取得動向(2016年)~アベノミクス開始以前の状況に後退~

増宮 守
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1――国内不動産取引額の減少
このように、売り手と買い手が共に積極的な取引を控えたにもかかわらず、2016年の国内の不動産取引額の減少は限定的であった。これは、市場を介さないスポンサー企業からの取得が多いJ-REITが2016年も取得額を増加したためであり、年間取得額は過去3番目に高い水準であった(図表-4)。また、機関投資家の新たな投資手段として人気を集めている私募REIT(非上場オープンエンド型不動産投資法人)も、J-REITと同様にスポンサーからの取得によって取得額を増加した(図表-4)。
一方、その他の投資主体による取得額の減少が著しく、J-REIT、私募REITによる増加を相殺して余るペースで減少し、直近のピークであった2014年からほぼ半減した(図表-4)。2012年の水準も下回るなど、アベノミクス開始以前の状況に戻っており、仲介会社の媒介や入札などによる開かれた投資市場の停滞が顕著といえる。
1 増宮 守 「不動産価格サイクルの先行的指標(2016年)~大半の指標がピークアウトを示唆~」 ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2016年10月13日
2 増宮守「海外資金による国内不動産取得動向(2015年)~リスク回避の動きが不動産取引にも影響~」ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート、2015年3月17日
3 都市未来総合研究所の「不動産トピックス2017年2月」によると、速報ベースで前年比-7.4%。
2――海外資金による取得額の縮小
2016年の海外資金による日本国内の不動産取得額は、前年比3割減の約6,000百万米ドル4であった(図表-5)。直近のピークとなった2014年からほぼ半減し、2012年の水準も下回るなど、アベノミクス開始以前の水準に戻っている。2016年の大半は、為替相場が円高ドル安で推移し、米ドル建てでみた日本の不動産価格は高値を更新し続ける状況であった。そのため、海外資金にとって高値を追いかける形での取得は難しかったとみられる。
また、2013、2014、2015年には、1,000百万米ドルを超える巨大な取引5が海外資金による取得額を膨張させたが、2016年には、そのような例外的に大規模な取引はみられなかった。加えて、2016年には、100百万米ドルを超える大規模な取引事例は7件に止まり、2015年の12件から大きく減少していた。
4 海外からの視点として、金額は米ドル建て表記としている。
5 2013年のグローバルコンソーシアムによる芝パークビルの取得、2014年のGIC(シンガポール)によるパシフィックセンチュリープレイスの取得およびブラックストーン(米国)による日本GE住宅ポーフォリオの取得、2015年のCIC(中国)による目黒雅叙園の取得。
(2017年03月14日「基礎研レポート」)
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