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海外資金による国内不動産取得動向(2016年)~アベノミクス開始以前の状況に後退~

増宮 守
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3――海外資金のセクター選好
海外資金による物流施設の取得額は、2016年に大幅に増加した。ネット通販の拡大などを背景に、2015年第4四半期以降、物流施設の新規供給が著しく増加しており、さらに2018年まで続く見込みとなっている。大量供給は競争力に劣るエリアの賃貸需給を悪化させているものの、投資対象となる物流施設ストックを拡大し、投資市場の充実に寄与している。
ただし、海外資金による取得額は増加したものの、日本の物流施設に対する楽観的な見方が一方的に増えたとはいえない。2016年の海外資金による取得は、ほとんどが他の海外資金が売却した物流施設の取得であった。大量供給による賃貸需給への懸念に加え、今後の金利上昇が長期固定賃料契約を有する物流施設に特に不利になるとの見方もある。そのような中、海外資金による物流施設の取得額は増加すると同時に、売却額も大きく増加していた。
一方、2016年の海外資金によるホテルの取得額は大幅に減少した。2016年には、急拡大してきたインバウンド宿泊需要が減速し、新規供給の増加や民泊施設との競合など、ホテル市場の需給懸念も顕在化してきた。ただし、国内では、依然としてホテル投資に対する強気な見方は多く(図表-7)、2016年の国内のホテル取引額は、J-REITが牽引する形で増加していた6。国内での楽観的な見方に反し、海外では日本のホテル市場をより慎重にみている可能性もあり、今後の海外資金によるホテルの取得動向には注意が必要である。
その他、伝統的な不動産投資対象であるオフィスセクターにおいて不動産サイクルが明確に表れている。2016年の海外資金によるオフィスの取得額は2012年の水準も下回り、既に不動産サイクルの停滞期に入っているとの見方もできる。
6 JLLによると、2016年の国内ホテルの推定取引額は、前年比+8%増加の約3,640億円。
4――海外資金のエリア選好
ちなみに、海外資金に限らずJ-REITについても、不動産取得額における東京都心5区の比率が2015年の28%から2016年に23%に低下しており、東京都心から郊外あるいは地方に取得先をシフトする動きがみられた。
(2017年03月14日「基礎研レポート」)
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