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- ポイントプログラムとは何か~一層の消費者保護と健全な発展に向けて
2016年12月13日
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3| 企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)の策定(2009年1月)
企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会は、5回にわたる検討を経て、2009年1月、報告書を公表した。
同報告書では、ポイントのトラブルの大半は、消費者の期待と発行企業の認識とのずれによるもので、消費者が内容を正しく理解できるような対応が発行企業に望まれるとしている。
具体的には、ポイントプログラムの内容全般を記載した書面などを交付し、消費者が必要に応じて確認できるようにし、付与条件や利用条件などに関する重要事項については、加入に際してわかりやすく表示・説明することを求めている。
また、利用条件の変更や、ポイントプログラムの終了などによって、消費者の利益を損なう場合には、相当な期間を設けて事前に告知するよう提言している。
ポイントの法的性質については、ポイントプログラムは事業者と消費者との間の民法上の契約と評価されることから、ポイントの権利性や法的性質は当事者間の合意により決定されるとして、関連する諸法律等に抵触しない限り、自由に定めることが可能とする一方、合意内容の確定に当たっては、約款やポイントサービスの内容について説明した書面に記載された内容が基本的に参酌されるが、具体的な勧誘時の経緯等も考慮されるべきとしている17。
この報告書での議論を踏まえ、経済産業省は、2008年12月、企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)を策定した。
ガイドラインの位置づけは、表示・説明やトラブルへの積極的な対応など、ポイント発行企業による自主的な取組みを通じて、消費者保護に取り組む上で留意することが望まれる事項を整理したものとされ、企業に対する強制力はない。
ポイントプログラムについて企業側の認識と消費者の期待が異なる場合、不満が生じることから、企業は、加入に際し利用条件を消費者に分かりやすく情報提供することが望ましいとしている。
具体的には、加入時に消費者に対し、利用条件の概要や「よくある質問」等の情報を簡潔に分かりやすく記した書面を交付したり、書面を用いた説明などが考えられると指摘している。
ポイントの有効期限について、著しく短い有効期限を定めるなど、消費者が期待する合理的な保護水準と異なるルールを設定する場合は、消費者に対して、特にわかりやすい情報提供を行うことが求められるが、こうしたルールの設定自体が消費者の利益を一方的に害するものであれば、消費者契約法 10 条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)に抵触し、無効となることもありうるとした。
さらに、「消費者が認識していない間にポイントの有効期限が経過することを回避するため、例えば、ダイレクトメールや電子メールによる消費者への定期的な連絡の中でポイント残高や有効期限を表示するなどの情報提供が行われる場合があるが、発行企業の対応コストを勘案しつつ、可能な範囲でこうした取組みが行われることが望まれる」として、企業側にポイントの保護に一定留意した取組みを要請している。
ポイントの利用条件の変更については、
『消費者がポイントプログラムに加入した後に、ポイントの利用条件を変更することは、消費者にとっては「貯めたポイントの使い勝手が悪くなったり、価値が減少する」ことにつながる可能性があるため、発行企業は、消費者のポイントプログラム加入に際し、こうした利用条件の事後的変更の可能性のある内容や、その際の告知の方法を約款や説明書面等に明記するとともに、加入後の条件変更に際しては、事前に消費者に告知を行うことが望ましい。この告知は、消費者が変更前の条件でポイントを行使することが実質的に困難でないよう、条件変更前の十分な期間をとることが望ましい。消費者に不利益となる変更の内容としては、(i)ポイント付与率の減少、(ii) 有効期限の短縮、(iii)ポイント交換レートの減少などが考えられるが、この中でも、既に貯めたポイントに影響する変更((ii)及び(iii))については、特に、消費者の利益を損なうものであり、告知を丁寧に行うことが重要である。特に、(ii)の有効期限については、プログラムの加入に際し、例えば「このポイントは永久に有効」と情報提供して勧誘した場合においては、発行企業はこの条件を変更することには慎重であるべきと考えられる』
として、消費者に対する丁寧な対応を求めている。
利用条件の変更の際の告知方法についても、
「告知のコストとのバランスを踏まえつつ、店舗でのポスター等による告知、ダイレクメールや電子メールによる告知、インターネットのウェブページでの告知などが考えられるが、その際、消費者の訪問間隔(店舗へ来店する周期、インターネットのポータルサイトにアクセスする周期)やポイント利用の頻度などを基準に、消費者が事前に条件変更を知り、貯めたポイントの利用などの対応ができるよう、相当な告知期間を設けることが望ましいと考えられる」
としている18。
当ガイドラインへの企業側の対応について、経済産業省は2009年8~10月、45社の調査を行ったが、ガイドラインの認知度は87%と高く、また、ガイドラインに完全に適応している企業は56%、おおむね適応している企業は44%などと、消費者保護に向けた取組みは進んでいるものとされた19。
17 「企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会報告書」(2009年1月)、国立国会図書館デジタルコレクション、国立国会図書館ホームページ。
18 経済産業省「企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)」(2008年12月)、国立国会図書館デジタルコレクション、国立国会図書館ホームページ。
19 「『企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)』への主要事業者の対応に関する調査結果等について~企業ポイントの健全な発展に向けて~」(2009年11月24日)、経済産業省ホームページ。
企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会は、5回にわたる検討を経て、2009年1月、報告書を公表した。
同報告書では、ポイントのトラブルの大半は、消費者の期待と発行企業の認識とのずれによるもので、消費者が内容を正しく理解できるような対応が発行企業に望まれるとしている。
具体的には、ポイントプログラムの内容全般を記載した書面などを交付し、消費者が必要に応じて確認できるようにし、付与条件や利用条件などに関する重要事項については、加入に際してわかりやすく表示・説明することを求めている。
また、利用条件の変更や、ポイントプログラムの終了などによって、消費者の利益を損なう場合には、相当な期間を設けて事前に告知するよう提言している。
ポイントの法的性質については、ポイントプログラムは事業者と消費者との間の民法上の契約と評価されることから、ポイントの権利性や法的性質は当事者間の合意により決定されるとして、関連する諸法律等に抵触しない限り、自由に定めることが可能とする一方、合意内容の確定に当たっては、約款やポイントサービスの内容について説明した書面に記載された内容が基本的に参酌されるが、具体的な勧誘時の経緯等も考慮されるべきとしている17。
この報告書での議論を踏まえ、経済産業省は、2008年12月、企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)を策定した。
ガイドラインの位置づけは、表示・説明やトラブルへの積極的な対応など、ポイント発行企業による自主的な取組みを通じて、消費者保護に取り組む上で留意することが望まれる事項を整理したものとされ、企業に対する強制力はない。
ポイントプログラムについて企業側の認識と消費者の期待が異なる場合、不満が生じることから、企業は、加入に際し利用条件を消費者に分かりやすく情報提供することが望ましいとしている。
具体的には、加入時に消費者に対し、利用条件の概要や「よくある質問」等の情報を簡潔に分かりやすく記した書面を交付したり、書面を用いた説明などが考えられると指摘している。
ポイントの有効期限について、著しく短い有効期限を定めるなど、消費者が期待する合理的な保護水準と異なるルールを設定する場合は、消費者に対して、特にわかりやすい情報提供を行うことが求められるが、こうしたルールの設定自体が消費者の利益を一方的に害するものであれば、消費者契約法 10 条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)に抵触し、無効となることもありうるとした。
さらに、「消費者が認識していない間にポイントの有効期限が経過することを回避するため、例えば、ダイレクトメールや電子メールによる消費者への定期的な連絡の中でポイント残高や有効期限を表示するなどの情報提供が行われる場合があるが、発行企業の対応コストを勘案しつつ、可能な範囲でこうした取組みが行われることが望まれる」として、企業側にポイントの保護に一定留意した取組みを要請している。
ポイントの利用条件の変更については、
『消費者がポイントプログラムに加入した後に、ポイントの利用条件を変更することは、消費者にとっては「貯めたポイントの使い勝手が悪くなったり、価値が減少する」ことにつながる可能性があるため、発行企業は、消費者のポイントプログラム加入に際し、こうした利用条件の事後的変更の可能性のある内容や、その際の告知の方法を約款や説明書面等に明記するとともに、加入後の条件変更に際しては、事前に消費者に告知を行うことが望ましい。この告知は、消費者が変更前の条件でポイントを行使することが実質的に困難でないよう、条件変更前の十分な期間をとることが望ましい。消費者に不利益となる変更の内容としては、(i)ポイント付与率の減少、(ii) 有効期限の短縮、(iii)ポイント交換レートの減少などが考えられるが、この中でも、既に貯めたポイントに影響する変更((ii)及び(iii))については、特に、消費者の利益を損なうものであり、告知を丁寧に行うことが重要である。特に、(ii)の有効期限については、プログラムの加入に際し、例えば「このポイントは永久に有効」と情報提供して勧誘した場合においては、発行企業はこの条件を変更することには慎重であるべきと考えられる』
として、消費者に対する丁寧な対応を求めている。
利用条件の変更の際の告知方法についても、
「告知のコストとのバランスを踏まえつつ、店舗でのポスター等による告知、ダイレクメールや電子メールによる告知、インターネットのウェブページでの告知などが考えられるが、その際、消費者の訪問間隔(店舗へ来店する周期、インターネットのポータルサイトにアクセスする周期)やポイント利用の頻度などを基準に、消費者が事前に条件変更を知り、貯めたポイントの利用などの対応ができるよう、相当な告知期間を設けることが望ましいと考えられる」
としている18。
当ガイドラインへの企業側の対応について、経済産業省は2009年8~10月、45社の調査を行ったが、ガイドラインの認知度は87%と高く、また、ガイドラインに完全に適応している企業は56%、おおむね適応している企業は44%などと、消費者保護に向けた取組みは進んでいるものとされた19。
17 「企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会報告書」(2009年1月)、国立国会図書館デジタルコレクション、国立国会図書館ホームページ。
18 経済産業省「企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)」(2008年12月)、国立国会図書館デジタルコレクション、国立国会図書館ホームページ。
19 「『企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)』への主要事業者の対応に関する調査結果等について~企業ポイントの健全な発展に向けて~」(2009年11月24日)、経済産業省ホームページ。
(2016年12月13日「基礎研レポート」)
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