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- 【8月米雇用統計】FRBに9月利上げを確信させるには、力強さに欠ける結果と判断
2016年09月05日
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1.結果の概要:雇用増加数は3ヵ月ぶりに20万人割れ、市場予想も下回る
9月2日、米国労働省(BLS)は8月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で15.1万人の増加1(前月改定値:+27.5万人)となり、3ヵ月ぶりに20万人を下回ったほか、市場予想の+18.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(後掲図表2参照)。
失業率は4.9%(前月:4.9%、市場予想:4.8%)とこちらは前月に一致、市場予想は上回った(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.8%(前月:62.8%)と前月から横這いとなった(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は4.9%(前月:4.9%、市場予想:4.8%)とこちらは前月に一致、市場予想は上回った(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.8%(前月:62.8%)と前月から横這いとなった(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:雇用者数、賃金ともに伸びが鈍化、9月利上げを確信させるには力不足
8月の雇用増加数は、6、7月の増加ペースが月間20万人台後半と持続不可能な水準となっていたことから、前月からの伸び鈍化は予想通りである。また、市場予想を3万人程度下回ったものの、後述するように7月の数値が2万人上方修正されたことから、市場予想に近い結果であったとも言える。ただし、雇用増加ペースが大きく低下した5月からの3ヵ月平均が19万人増となっていたことを考慮すれば、8月の結果は5~7月の増加ペースに比べてやや鈍化が大きかったと評価すべきだろう。

このようにみると、8月の結果は労働市場の回復基調の持続を示したものの、雇用や賃金の伸びが鈍化していることから、労働市場回復の力強さを感じられるものではなかった。
7月のFOMC議事録では、追加利上げ時期について意見集約されていないことが示されていた。その後、先月下旬のジャクソンホールでのシンポジウム以降、FRB関係者から追加利上げに前向きな発言が続いたことから、市場の一部には8月の雇用統計が市場予想並みの結果となる場合にはFRBが9月に追加利上げを実施するとの見方がでていた。しかしながら、8月の結果は、9月のFOMCにおいて追加利上げで意見集約できるような強い結果でなかったとみられる。このため、筆者は、9月追加利上げの可能性は低いと判断している。
3.事業所調査の詳細:製造業、建設業で雇用が減少

サービス部門の中では、小売が前月比+1.5万人(前月:+1.1万人)と前月から増加したほか、情報関連が+0.4万人(前月:▲0.4万人)とプラスに転じた。しかしながら、人材派遣業が▲0.3万人(前月:+1.3万人)と減少に転じるなど、専門・ビジネスサービスが+2.2万人(前月:+8.0万人)となったほか、医療サービスも+1.4万人(前月:+4.5万人)となるなど、幅広い業種で前月から雇用の伸びが鈍化した。
財生産部門は、前月比▲2.4万人(前月:+1.1万人)と減少に転じた。資源関連が▲0.4人(前月:▲0.5万人)と雇用減少が持続したほか、製造業▲1.4万人(前月:+0.6万人)や建設業▲0.6万人(前月:+1.1万人)も減少に転じた。
政府部門は前月比+2.5万人(前月:+5.0万人)と前月から伸びが鈍化した。内訳をみると連邦政府が+0.1万人(前月:+0.2万人)、州・地方政府も+2.4万人(前月:+4.8万人)といずれも鈍化した。
前月(7月)と前々月(6月)の雇用増(改定値)は、前月が+27.5万人(改定前:+25.5万人)と+2.0万人上方修正された一方、前々月は+27.1万人(改定前:+29.2万人)と▲2.1万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲0.1万人の下方修正となった(図表3)。
なお、BLSの公表に先立って8月31日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+17.7万人(前月改定値:+19.4万人、市場予想:+17.5万人)となり、大幅に上方修正された前月改定値は下回ったものの、市場予想は上回った。
8月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.73ドル(前月:25.70ドル)となり、前月から+3セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.3時間(前月:34.4時間)と、こちらは前月から減少した。その結果、週当たり賃金は882.54ドル(前月:884.08ドル)と、6ヵ月ぶりに前月から減少した(図表4)。
なお、BLSの公表に先立って8月31日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+17.7万人(前月改定値:+19.4万人、市場予想:+17.5万人)となり、大幅に上方修正された前月改定値は下回ったものの、市場予想は上回った。
8月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.73ドル(前月:25.70ドル)となり、前月から+3セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.3時間(前月:34.4時間)と、こちらは前月から減少した。その結果、週当たり賃金は882.54ドル(前月:884.08ドル)と、6ヵ月ぶりに前月から減少した(図表4)。
(2016年09月05日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1824
経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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