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公的年金額の据え置きは、年金財政にとって二重の痛手-年金額改定ルールと年金財政への影響の再確認
保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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2 ――― 2016年度の改定で、改定ルールはどう機能したか:2つの特例措置で年金財政に悪影響
1|本則の改定に特例措置が適用
図表8の参考1に記載されている諸数値を図表2に示した式に当てはめると、賃金改定率と物価改定率は次のようになります。
・賃金改定率=名目手取り賃金変動率=-0.2% (この内訳は図表8の※1を参照)
・物価改定率=物価変動率=+0.8%
この2つを図表3に当てはめると、賃金改定率がマイナスで物価改定率がプラスなので、図表3の85)に当てはまることになります。このため、前述の理由で、2016年度の年金額改定率は次のようになります。これが、図表8の参考2に記載されている内容になります。
・新しく受け取り始める年金額の改定率(本則改定率)=ゼロ%
・受け取り始めた後の年金額の改定率(本則改定率)=ゼロ%
このように2016年度の本則ルールの年金額改定は図表3の(5)に当てはまるため、年金額の改定率が賃金改定率よりも高くなり、年金財政が悪化する方向に働きます。
先ほど確認した本則の年金額改定率と、図表8の参考1に記載されているスライド調整率を図表6に当てはめると、特例措置aに当てはまります。このため、スライド調整後の年金額改定率は次のようになります。
3 ――― 法案提出が予定されている見直しの内容:特例措置を見直し、年金財政の悪化を抑制
1|近年の状況
先ほど見たように、2016年度の年金額改定では、本則の改定ルールと財政健全化のための調整ルール(いわゆるマクロ経済スライド)の双方で特例措置に該当し、2つの意味で年金財政に悪影響を与えることになりました。
このように特例措置に該当する状況は、2016年度に限りません。本則の改定では、2006年度以降はずっと特例措置(図表3のパターン(4)~(6))に該当しており、特に年金財政に悪影響を与えるパターン(図表3のパターン(5)と(6))が多くなっています(図表9)。財政健全化のための調整(いわゆるマクロ経済スライド)では、初実施となった2015年度は原則に該当しましたが、その背景には2014年4月に消費税の税率が引き上げられた影響で物価改定率が高めになる、という特殊事情がありました。2014年度以前に財政健全化のための調整(いわゆるマクロ経済スライド)実施されていたと仮定した場合には、特例措置に該当して年金財政に悪影響を与えるパターンが多くなっていたと想定されます(図表9のグレーの部分)。
(2016年02月22日「基礎研レポート」)
03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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