2014年07月24日

貿易統計14年6月~輸入の大幅減少を主因に、4-6月期の外需は4四半期ぶりに成長率の押し上げ要因に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・貿易赤字が再び拡大
・輸出は低迷が続く
・4-6月期の外需寄与度は前期比0.7%程度のプラスに

■要旨

財務省が7月24日に公表した貿易統計によると、14年6月の貿易収支は▲8,222億円の赤字となった。輸出が前年比▲2.0%(5月:同▲2.7%)と2ヵ月連続の減少となる一方、輸入が前年比8.4%(5月:同▲3.5%)と2ヵ月ぶりに増加に転じたため、前年に比べた貿易収支は3ヵ月ぶりに悪化した。
季節調整済の貿易収支は▲10,808億円の赤字となり、5月の▲8,613億円から赤字幅が拡大した。貿易赤字は13年度末にかけて大きく拡大した後、消費税率引き上げ後の内需減速を反映した輸入の落ち込みから4月、5月は縮小したが、6月は内需持ち直しに伴い輸入が増加したため、再び赤字幅が拡大した。

4-6月期の輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)で見ると、米国向けが前期比▲0.9%(1-3月期:同1.6%)、EU向けが前期比1.1%(1-3月期:同▲0.3%)、アジア向けが前期比▲2.1%(1-3月期:同▲1.6%)、全体では前期比▲0.5%(1-3月期:同▲1.6%)であった。景気持ち直しが続いているEU向けは比較的底堅いが、寒波の影響を脱し景気が堅調に推移している米国向けは依然として横這い圏の動きが続いており、米国向けの自動車輸出は5月の前年比▲23.6%に続き6月も同▲7.7%の減少となった(台数ベース)。米国内の自動車販売は好調だが、日本企業は現地生産の拡大によって対応しているため、日本からの輸出につながっていない。また、アジア向けはASEAN諸国を中心とした新興国経済の弱さを反映し、アジア向けが低調な動きを続けている。
一方、6月の輸入数量指数(季節調整値)は前月比3.6%の上昇となったが、4-6月期平均でみると、駆け込み需要の反動を主因とした国内需要の減少を反映し、前期比▲4.9%(1-3月期:同2.4%)と急速に落ち込んだ。

6月までの貿易統計と5月までの国際収支統計の結果を踏まえて、4-6月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比ほぼゼロ%、輸入が前期比▲4%台後半のマイナスとなることが見込まれる。この結果、4-6月期の外需寄与度は前期比0.7%(1-3月期:同▲0.3%)と4四半期ぶりのプラスとなり、成長率を大きく押し上げることが予想される。ただし、外需の大幅プラスは国内需要の落ち込みを背景とした輸入の減少によるものであり、その裏返しとして、個人消費、住宅投資、設備投資の国内民間需要は急速に落ち込んでいる。現時点では、4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率▲6%程度の大幅マイナス成長になると予想している。

(2014年07月24日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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