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- 貿易統計12年11月~大幅な貿易赤字が続くが、輸出に下げ止まりの兆しも
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■見出し
・大幅な貿易赤字が続く
・アジア向け輸出に明るい兆し
■introduction
財務省が12月19日に公表した貿易統計によると、12年11月の貿易収支は▲9,534億円と5ヵ月連続の赤字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:▲10,069億円、当社予想は▲11,016億円)は上回った。輸出の減少幅は10月の前年比▲6.5%から同▲4.1%へと若干縮小したが、輸入が前年比0.8%(10月:同▲1.5%)と2ヵ月ぶりに増加したため、貿易収支の赤字幅は前年に比べ37.9%の増加となった。
日中関係悪化による影響が懸念されている中国向けの輸出は前年比▲14.5%となり、10月の同▲11.6%から減少幅が拡大した。ただし、中国向けの輸出は7月から10%程度の減少が続いており、反日デモの激化以降に減少幅が大きく拡大したわけではない。不買運動の影響が大きい自動車は前年比▲68.6%(10月:同▲82.0%)と急速な落ち込みが続いているが、現時点では日中関係悪化が輸出全体に大きな影響を与えるまでには至っていないと判断される。
季節調整済の貿易収支は▲8,685億円と21ヵ月連続の赤字となり、10月の▲6,194億円から赤字幅が拡大した。輸出が前月比▲0.1%とほぼ横ばいにとどまる一方、輸入が前月比4.3%と比較的高い伸びとなったことが赤字拡大に寄与した。
11月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲0.3%(10月:同2.4%)、EU向けが前年比▲18.7%(10月:同▲24.4%)、アジア向けが前年比▲4.1%(10月:同▲6.6%)となった。季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比▲0.8%、EU向けが同3.2%、アジア向けが同1.0%、全体では同▲0.5%であった。
EU向けの増加は10月の大幅な落ち込み(前月比▲8.2%)の反動によるもので基調として低迷が続いていると考えられる。
一方、中国向けが大きく落ち込んでいるにもかかわらず、アジア向けが増加に転じたことは明るい兆しと捉えることが可能だろう。アジアNIEs向けの輸出は前年比▲0.5%(10月:同▲4.8%)と減少幅が縮小、ASEAN向けは前年比9.4%(10月:同3.7%)と増加幅が大きく拡大した(いずれも金額ベース)。現時点では中国向けの輸出が足を引っ張る形となっているが、中国経済自体は内需主導で回復し始めており、日中関係悪化の影響が和らぐにつれて日本からの輸出も持ち直すだろう。
輸出は低迷が続いているが、アジア向けを牽引役として12年度中には回復に向かう可能性が高い。足もとの為替レートが円安傾向となっていることも輸出への追い風となろう。
(2012年12月19日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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