2011年02月28日

鉱工業生産11年1月~生産は持ち直しが明確となるが、在庫積み上がりが懸念材料に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・生産は3ヵ月連続の上昇だが、在庫指数が急上昇
・1-3月期は3四半期ぶりの増産は確実

■introduction

経済産業省が2月28日に公表した鉱工業指数によると、11年1月の鉱工業生産指数は前月比2.4%と3ヵ月連続で上昇したが、事前の市場予想(共同通信集計:前月比3.8%、当社予想は同3.5%)は下回った。出荷指数は前月比1.1%と3ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比4.7%と2ヵ月連続の上昇となった。
生産指数は10年6月からの5ヵ月間で5%以上低下したが、その後の3ヵ月でその落ち込み分を取り戻し、リーマン・ショック後の最高水準を更新した。ただし、直近のピーク(08年2月)と比べると依然9割弱の水準にとどまっている。
1月の生産を業種別に見ると、国内販売の持ち直しを受けて輸送機械が前月比7.5%の高い伸びとなったほか、鉄鋼(前月比5.6%)、一般機械(前月比4.6%)も高い伸びとなった。一方、情報通信機械は液晶テレビ、携帯電話の減産などから前月比▲9.0%の急低下となった。
速報段階で公表される16業種中、13業種が前月比で上昇、2業種が低下(1業種が横ばい)となった。
鉱工業生産は持ち直しの動きが明確となっているが、先行きを見る上で懸念されるのは在庫の積み上がりである。在庫指数は2ヵ月続けて前月比で高めの伸びとなり(12月:前月比1.6%、1月:同4.7%)、前年比では12月の3.7%から7.3%へと積み上がり幅が拡大した。
輸送機械の在庫が前月比19.5%と急上昇したのは、輸出の船待ちという一時的な要因の可能性もあるが、情報通信機械の積み上がりは、昨年12月からのエコポイント制度見直し(ポイント数半減)、1月からの対象製品絞り込みに伴い、テレビ販売が落ち込んでいることが影響していると考えられる。1月の情報通信機械の在庫指数は前月比40.7%の急上昇となり、前年比では12月の21.2%から52.8%へと積み上がり幅が大きく拡大した。また、電子部品・デバイスの在庫指数も前年比53.8%(12月:同48.3%)と高止まりが続いており、IT関連業種では在庫調整圧力が強い状態が続いている。
鉱工業全体の在庫循環図を確認すると、10年4-6月期から10-12月期までは「在庫積み増し局面」に位置していたが、11年1月単月では「在庫積み上がり局面」に移行した。IT関連業種を中心とした在庫調整圧力が先行きの生産を下押しするリスクがあることには注意が必要だろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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