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ETCと社会保障カード ~2匹目のドジョウは簡単には見つからない~
                                                阿部 崇
ご承知の通り、この恩恵を受けられたのはETCというシステムを搭載した車両に限られ、直前には車載機の取り付けにかかる費用の助成なども行われたが、一部不公平感が残る結果となった(と言われている)。もっとも、連休中の報道等では一応の経済効果があったことが強調され、施策としては成功の部類に入ると思われる。
この施策の良し悪しの評価は別として、今回は“2匹目のドジョウ”を狙う次なるシステムは何か、を考えたい。候補はいくつか考えられるが、年金記録や後期高齢者医療の後始末の傍らで着々とその準備が進められ、先月30日に基本計画(検討会報告書)が公表された「社会保障カード」もその一つであろう。
社会保障カードとは、ザックリ言えば、年金、医療、介護等の社会保険をはじめとする社会保障関連の個人情報を一元化するカードであり、現在バラバラに交付されている保険証を集約し、また、既往歴や年金額なども確認できる手段として検討されているものである。現在は、どの範囲の社会保障情報をカードに収載し、どのようなメリットがあるか、などが中心に議論されている段階であるが、今回のETC効果にあやかって、今後の論点が社会保障カードの「決済機能」に安易に流れていくことが懸念される。
確かに、利便性を追求すれば、年金受取や保険料・窓口負担(医療や介護の自己負担)の支払などの決済機能を有する社会保障カードの導入は望まれるところであろう。保険料未納や医療機関等の未収金の問題も解消に向かい、さらに、今回のような経済対策のツールとして利用することも可能となるかもしれない(窓口負担を半年間1割にしますよ、など)。
しかし、社会保障は国民生活の根幹を成す重要な制度の集まりであり、一部にしかあてはまらないことや大きな運用ミスは許されない。また、将来の負担引上げのハードルを事前に下げておく(土日・夜間は4割負担という変更もスムーズ?に導入できるはず)、とも誤解されかねない仕組みには賛成できない。
あらゆる場面での新しいシステムの導入はもちろん否定されるものでない。しかし、その際に十分に検討すべきは、それにあてはまる大多数の人々のことではなく、必ず存在する“例外”への対応である。例えば、大多数の窓口負担の確実回収を基本としつつも、数%の生活保護境界層(例外)への対応に知恵を絞ることである(生活保護給付から天引せずに窓口での柔軟対応を認める、など)。“例外”にキチンと対応することなく、単なる説得で済まそうとすれば、また大きな代償を支払うことになる。
基礎年金番号の統一の際のシステム不備に端を発した年金問題、保険料の年金天引の際の例外軽視に始まった後期高齢者医療問題をお忘れではないか。
(2009年05月07日「研究員の眼」)
阿部 崇
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