2008年09月25日

貿易統計08年8月~貿易収支は赤字に転落

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・貿易収支は原数値、季節調整値ともに赤字に転落
・米国向け輸出の減少幅が急拡大

■introduction

財務省が9月25日に公表した貿易統計によると、8月の貿易収支は▲3,240億円の赤字となり、ほぼ市場予想通り(ロイター集計:▲4,000億円、当社予想は▲1,404億円)の結果となった。また、貿易収支の季節調整値も▲1,133億円の赤字となった。
貿易収支の赤字化は、原数値では正月休みの影響で輸出量が少ない1月を除けば1982年11月以来ほぼ26年ぶり、財務省が公表している1998年9月以降の季節調整値では初めてのこととなる。
輸出価格は前年比3.5%(7月:同0.6%)と伸びが高まったが、輸出数量が前年比▲3.1%(7月:同7.3%)と急減速したため、輸出金額は前年比0.3%(7月:同8.0%)とほぼ横ばいにとどまった。
輸入数量は前年比▲5.5%(7月:同▲1.4%)と減少幅が拡大したが、原油高の影響などから輸入価格が前年比24.2%(7月:同19.9%)と伸びがさらに加速したため、輸入金額は前年比17.3%と7月の同18.2%に続き高い伸びとなった。
8月の貿易収支が赤字となった主因は、入着ベースの原油価格が高止まりしたことにより、輸入価格が前年比24.2%と非常に高い伸びとなったことである。WTI先物ベースの原油価格は6、7月(月中平均)の1バレル=130ドル台をピークに8月が117ドル、9月(9/1~24)が104ドルと大幅に下落しているが、通関(入着)ベースの原油価格はWTIに遅れて動く傾向があるため、7月の132ドル/バレルから8月も134ドル/バレルと高止まりした。
9月以降は入着ベースの原油価格も下落に転じ、輸入価格の上昇率は頭打ちとなることが見込まれる。このため、現時点では貿易収支の赤字化が定着しているとは見ていない。
ただし、ここにきて輸出の減速が鮮明となっているため、輸出の低迷と輸入価格の上昇率低下が綱引きする形で、貿易収支は低水準で推移することが予想される。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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