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■要旨
1.世帯主60 歳以上の世帯が総世帯に占める割合は、総人口に占める60歳以上人口の割合の上昇ペースを上回る速度で上昇を続け、2006年には42.3%に達している。このうち、世帯主が引退していると見られる無職世帯の割合は67.4%もあり、「引退後の世帯」という意味で60 歳以上の無職世帯のみを見たとしても、総世帯の28.5%を占める存在となっている。
2.通常、引退後は可処分所得の範囲で消費を賄うことはできないため、現役期に蓄えた資産の一部を取り崩して、消費のために用いる。その結果、60歳以上の無職世帯においては、可処分所得と消費との差である貯蓄や貯蓄率の値は負となっている。しかも、貯蓄率のマイナス幅が1990 年代末から拡大している。
3.かつては60歳未満の世帯の水準に遜色なかった60歳以上の勤労者世帯の貯蓄率も、1990年代末から大幅に低下している。60歳以上の世帯の割合が高まったこと、及び勤労者世帯・無職世帯を問わず、60歳以上の世帯の貯蓄率が大幅に低下していることは、社会全体の貯蓄率を押し下げる要因となっている。
4.60歳以上の無職世帯が消費に不足する資金を賄う際、取り崩しの対象とする資産は金融資産であり、その大半が預貯金である。他方、実物資産の取り崩しや借入れの増額はほとんど行われない。貯蓄率が低下を続けるなかにあっても、こうした構造は、今のところ変わっていない。今後もこの構造が続くのか、取り崩し対象が預貯金以外の金融資産や持家などにも及ぶのかどうかが、注目される。
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石川 達哉
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