コラム
2007年07月19日

「エコバッグ」騒動と地球温暖化

栗林 敦子

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7月14日、イギリスの人気バッグ・ブランドである「アニヤ・ハインドマーチ(Anya Hindmarch)」のエコバッグ「I'm not A Plastic Bag」が日本でも限定販売され、台風による荒天にもかわらず、各地でこれを買うための行列ができ、直営店や取扱百貨店の開店とともに争奪戦が繰り広げられた。

このバッグは、「世の中を少しずつ良くするために、日々できることからはじめよう」をテーマに様々な活動を行う英国の非営利団体「We Are What We Do」が、買い物の際のレジ袋に代わるバッグのデザインをアニヤに呼びかけて誕生したものである。すでに、今年の3月にはロンドンやパリでも販売され、有名女優が持ち歩くおしゃれなエコバッグとして話題を集めていた。

ここのところ、大手スーパーなどでもレジ袋の有料化やエコバッグ・買い物袋持参の際のポイント付与などが広まり、消費者にとってもエコバッグは身近な存在になりつつある。しかし、この、「I’m not A Plastic Bag」は、今のところ、実際のスーパーでの買い物には使われそうもない。日本での販売価格は2100円であるが、希少価値のある「おしゃれバッグ」として使われるのか、あるいはネットオークションなどで高値で転売するために購入されているようである。いずれにしても、環境を考えたエコ活動というより、エゴイスティックな行動だと思えるのは、筆者だけではないだろう。

地球温暖化についての人々の認識を詳細に調べてみると、暖冬や大雨など例年とは違う気候変動を実感し、今起きつつあるリスクの最大のものとして認識してはいる。しかし、「地球温暖化」「気候変動」というキーワードがインプットされている人は多いものの、今後地球規模でどのような問題に発展していくのかを具体的にあげたり、何が原因となっているのかについて正しい知識を持つ人は多くはない。特に原因については二酸化炭素(CO2) などの温室効果ガスではなく、「オゾン層の破壊」をあげる人が大半である。

原因についての正しい知識を持たない人に、個人レベルで解決につながる行動をしているかと聞いても無理があるが、人々が行っているのは、何と言っても「エコバッグ利用」で、電気やガソリンなどエネルギー消費の抑制をあげる人よりも多い。エネルギー消費抑制は、環境というより電気代などが「もったいない」からである。政府は、「チーム・マイナス6パーセント」というCO2削減のための大キャンペーンを行っているが、これも、言葉の認知度は高まっても、肝心なエネルギー消費抑制は遅々として進まないようである。

ところで、人々は、「エコバッグ」ではなく「エコバッ」と発音する傾向がある。言葉の間違いだけならいいが、理念が浸透せずに単なる流行で終わることのないようにしたい。

(2007年07月19日「研究員の眼」)

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