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1.似て非なる「貯蓄率低下」の意味
(注)可処分所得(年金基金年金準備金の変動を含む)に対する割合
(資料)内閣府「国民計算計算年報」、OECD「National Accounts」ほか
(注)各国の1992年における実質家計消費を100に基準化した指数
(資料)内閣府「国民計算計算年報」OECD「National Accounts」ほか
貯蓄を巡る彼我の差はこれだけにとどまらない。家計、企業、政府のフローの貯蓄を集計した国全体の総貯蓄に関して、最大の低下幅を示しているのが、日本なのである。多くの国において、政府の財政状況は10年前と比べれば、改善された状況にある。つまり、政府貯蓄の源泉である税収が増大しているため、貯蓄率の低下によってフローの家計貯蓄が減少しても、国全体の総貯蓄は従来とさほど変わらない水準が保たれている。日本の場合、事業の再構築に伴って企業の貯蓄は踏みとどまっているものの、政府貯蓄のマイナス幅が拡大しており、国全体の貯蓄水準(フロー)は名目GDP比で大きく低下している。
(注)固定資本減耗を控除した純貯蓄(各部門の総計)の名目GDP比
(資料)内閣府「国民計算計算年報」、OECD「National Accounts」
2.投資率低下を背景に資本ストックも減少に転じた日本
数値は統計改訂によって資本ストック増加を示すものに十分に変わり得る範囲のものであり、基調的な減少、反転が見込み難い趨勢とは言えない。しかし、将来の経済活動を供給面から支える資本ストックが、量的には人口と同様にピークに近づきつつある可能性を頭から否定することはできない。
(注)実質資本ストック変化額は期末純固定資産額の前年との差
(資料)内閣府「国民計算計算年報」に基づいて作成
新規投資の原資となるフローの貯蓄に関しても、最初に増強ありきではなく、有益な投資に有効に用いられるよう正しい道筋を付けることが重要であろう。貯蓄とは将来の消費に用いられるためのものであり、どれだけ貯蓄すべきかを決めるのは究極的には投資の収益率になるだろう。もちろん、貯蓄や投資の水準は決して無視できない。それだからこそ、質を加味したえでの量という観点から中身を問うことが今日的課題と言えないだろうか。
(2004年05月10日「エコノミストの眼」)
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