- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 家計金融資産に占める預貯金の割合が高いのはなぜか?
コラム
2001年11月19日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.家計の金融資産に占める預貯金と株式の割合
これらの事実からは、わが国家計のリスク許容度は低く、安全性偏重の資産選択を行っているとする見方には疑念をさしはさむ余地がないかのように見える。
しかし、以下で見るように、資産を金融資産に限定せず、家屋や土地などの実物資産も含めた総資産ベースで議論すると、認識は根底から改めなければならない。
しかし、以下で見るように、資産を金融資産に限定せず、家屋や土地などの実物資産も含めた総資産ベースで議論すると、認識は根底から改めなければならない。
2.住宅・土地保有と負債および預貯金の関係
日本の場合、その持家の住宅ローンが家計部門の負債の大半を占めており、住宅ローン残高の増加額は住宅投資額に連動している。住宅取得の資金に関して、自己資金はだいたい半分であり、残り半分は借入に依存している。自己資金の割合を多くすればその分だけ借入を少なくできるが、金融資産のかたちで蓄えた資金のすべてを住宅取得に充当するのではなく、一部は金融資産のまま残すのが、一般的であろう。生活を営むうえで起こり得る不時の出費に備えるためである。
ここで注目したいのは、住宅取得とひきかえに負債を背負うことになった世帯の金融資産の内訳である。流動性と安全性の高い資産、すなわち、預貯金が優先されるのは当然のことである。実際、負債の総資産に対する割合と金融資産に占める預貯金の割合の推移を見ると、両者は驚くほど似通った動きをしている。地価が右上がりを続けていた時代においてさえ、家屋や土地は流動性の面では不利な資産であった。土地が必ず値上がりするものとはみなされなくなった現在、住宅ローンを抱える世帯が以前に増して預貯金中心の金融資産構成とするのは、きわめて理にかなっている。
ここで注目したいのは、住宅取得とひきかえに負債を背負うことになった世帯の金融資産の内訳である。流動性と安全性の高い資産、すなわち、預貯金が優先されるのは当然のことである。実際、負債の総資産に対する割合と金融資産に占める預貯金の割合の推移を見ると、両者は驚くほど似通った動きをしている。地価が右上がりを続けていた時代においてさえ、家屋や土地は流動性の面では不利な資産であった。土地が必ず値上がりするものとはみなされなくなった現在、住宅ローンを抱える世帯が以前に増して預貯金中心の金融資産構成とするのは、きわめて理にかなっている。
逆に言えば、家屋や土地の流動性が高まれば、金融資産の中での配分においてもリスク性資産の比重を上げることができるはずである。もし、家計部門にリスクマネーの供給者として株式保有の積極化を期待するのであれば、株式関連税制を見直すだけでなく、不動産流通市場、とりわけ、中古住宅市場の活性化をはかることが重要であろう。
(2001年11月19日「エコノミストの眼」)
このレポートの関連カテゴリ
石川 達哉
石川 達哉のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2018/12/28 | 同床異夢の臨時財政対策債-償還費を本当に負担するのは国か、地方か? | 石川 達哉 | 研究員の眼 |
2018/07/13 | 「地方財源不足額」は本当に解消されているのか?―先送りされ続ける臨時財政対策債の償還財源確保 | 石川 達哉 | 基礎研レポート |
2017/08/31 | 再び問われる交付税特会の行方-地方財政の健全性は高まったのか? | 石川 達哉 | 基礎研レポート |
2017/07/03 | 増大する地方公共団体の基金残高 その2-実は拡大している積立不足!? | 石川 達哉 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月09日
グローバル株式市場動向(2025年4月)-トランプ関税への各国の対応が注目される -
2025年05月09日
英国金融政策(5月MPC公表)-トランプ関税が利下げを後押し -
2025年05月09日
官民連携「EVカーシェア」の現状-GXと地方創生の交差点で進むモビリティ変革の芽 -
2025年05月09日
ESGからサステナビリティへ~ESGは目的達成のための手段である~ -
2025年05月09日
減速に拍車がかかる米労働市場-足元は堅調維持もトランプ政権の高関税政策が継続する場合に大幅な減速は不可避
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【家計金融資産に占める預貯金の割合が高いのはなぜか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
家計金融資産に占める預貯金の割合が高いのはなぜか?のレポート Topへ