2015年04月30日

鉱工業生産15年3月~2四半期連続の増産も在庫調整圧力は残存

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・1-3月期の生産は前期比1.7%と増産ペースが加速
・在庫調整圧力が残り、生産の回復ペースは緩やかにとどまる

■要旨

経済産業省が4月30日に公表した鉱工業指数によると、15年3月の鉱工業生産指数は前月比▲0.3%と2ヵ月連続で低下したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲2.3%、当社予想は同▲2.4%)は大きく上回った。15年1-3月期の生産は前期比1.7%と2四半期連続の増加となり、14年10-12月期の同0.8%から伸びが加速した。業種別には設備投資の持ち直しを反映し、はん用・生産用・業務用機械が前期比3.4%の高めの伸びとなったほか、消費税率引き上げ後の在庫積み上がりから減産が続いていた輸送機械が前期比2.6%と4四半期ぶりの増加となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は14年10-12月期の前期比2.7%の後、15年1-3月期は同1.2%と3四半期連続で増加した。また、建設投資の一致指標である建設財出荷は14年10-12月期の前期比▲2.6%の後、15年1-3月期は同0.3%と4四半期ぶりに増加した。GDP統計の設備投資は14年4-6月期に前期比▲5.0%と大きく落ち込んだ後、7-9月期が同▲0.2%、10-12月期が同▲0.1%と小幅ながら3四半期連続の減少となったが、15年1-3月期は増加に転じる可能性が高いだろう。
消費財出荷指数は14年10-12月期の前期比▲1.2%の後、15年1-3月期は同3.3%と4四半期ぶりに増加した。非耐久財が前期比1.6%と堅調を維持する中、駆け込み需要の反動から減少が続いていた耐久財が反動の一巡に伴い前期比5.4%と4四半期ぶりの増加となった。このように、供給側の統計である鉱工業指数の消費財出荷は堅調だが、需要側の統計である家計調査は低調な動きが続いている。15年1-3月期のGDP統計の個人消費は14年10-12月期の前期比0.5%から伸びが鈍化することが予想される。

15年3月の生産指数を4,5月の予測指数で先延ばし(6月は横ばいと仮定)すると、15年4-6月期は前期比0.6%となる。生産の回復基調は維持される見込みだが、懸念材料は在庫が依然として高止まりしていることである。在庫指数は消費税率引き上げ後の国内需要の落ち込みを受けて夏場にかけて急上昇した。その後積み上がりのペースは緩やかとなっているものの、四半期ベースでは5四半期連続で前期比上昇となるなど、在庫調整の進捗は遅れている。特に輸送機械の在庫水準は高めとなっており、このことが4、5月の減産計画につながっている可能性が高い。輸出は持ち直しつつあるものの、個人消費を中心とした国内需要の回復力が弱いことが在庫調整の遅れをもたらしている。消費税率引き上げから約1年が経過したが、依然として在庫調整圧力が残っていることから、生産の回復ペースは当面緩やかにとどまる可能性が高いだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2015年04月30日「経済・金融フラッシュ」)

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